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2012年10月17日水曜日

太陽電池は救世主か?

 7月から始まった太陽光発電の全量買い取り制度ですが、この制度のお手本となった独逸では電気代は上がるわ国内の太陽電池メーカーは安価な中国製に押されて破綻しちまうわで、どうもこれは失敗だったのでは?
…という話になっており、これをそのまんま日本で実施することについて疑問を呈する人たちもおります。
 そもそも、"太陽電池を設置することが商売になるように"設定した価格で電気を買い取らせるという下駄を履かせなきゃ普及が見込めないという時点でカタギな発電じゃねーだろって思うんですが、それ以上に問題なのは国内の太陽電池生産メーカーが潰される危険性があるという点ですね。
では、何故そうなるのか?
環境にも労働者の権利にも配慮して商売してる会社はグローバル社会では、安い人件費に加え環境への配慮をおざなりにしてまで安い太陽電池をバカスカ作るような連中とは競争できないという事も勿論ありますが、それに加えて太陽電池はその製造自体に安定した大量の電力が必要という事情があるのです。

一例として、太陽電池の主原料であるシリコンについて工業や化学というものに疎い人のために説明すると、このへんなんか読めば判る通り工業用途のシリコンというものは、まずシリカという鉱物をアーク放電によって還元し、さらに塩素と反応させて高純度ポリシリコン、半導体に使う場合には電気炉に放り込んでドロドロに融解させ、更に精製するという手法を用います。
 上で取り上げた廃液事件の原因となったのはここでの高純度ポリシリコンの原料となる四塩化珪素ですね。
太陽電池を作る場合、これのガスを使ってガラス基板の上にポリシリコンの膜を生成させるというのが製法の一つです。

ウィキペディアのこの記事にもある通り、太陽電池には半導体グレードほどの純度は必要とされないために、より少ない電力で必要最小限度の純度を確保した太陽電池グレードシリコンというものもあることはあるのですが、中身読めば判る通り、金属グレードのシリコンを直接精錬するか、もしくはシリカを化学的に精製したのちアーク炉で還元するという手法を使っています。
…つまるところ何をどうしようが珪素とガッチリ結合した酸素を切り離すために大量のエネルギーを投入する工程だけは外せないわけです。

 すると結局どうなるか。
全量買い取り制度で電気代が上がった国では言うまでもなく太陽電池の原価にこの値上がりした電気代まで上乗せされてきます。
…当然のことながら、環境や労働者の権利にまで配慮し、異常円高に苦しめられる状況下で。

それでも太陽電池を製造しているメーカーは商品が売れるだけマシです。
太陽電池以外の工業製品…たとえば集積回路を生産しているメーカーなんかだとこういった負担増による内需縮小で商品が売れなくなることに加え、電気代高騰のため生産コストがアップするというダブルパンチを喰らうハメになります。

つまるところ、原子力憎さに下駄を履かせてまで太陽光発電を推進する。
しかも、国民に負担を強制し、国内の製造業を圧迫する形で…
というのが全量買い取り制度の正体なのだと言わざるを得ないわけです。

それでもまだ太陽電池マンセーしとる人のためには、こういうかなり事実を含んだ冗談があったりします。

 ただし、小官が愚考する範囲では下駄の履かせかた次第では太陽光発電の普及と経済発展を両立できる方法が無くもないです。

"太陽電池で作った電気"に下駄を履かせ、そのしわ寄せを電気代に乗せようとするからこういう歪みが発生するわけです。
では、"太陽電池を作る会社"に下駄を履かせるというのはどうでしょう?

具体的には、国がシャープなりパナソニックなりといった国内の太陽電池メーカーの生産した太陽電池を"太陽電池を製造することが商売になる"価格で大量に買い取り、国民に対しては十年分の電気代とトントンになる程度の価格で売る。
 当然、そんなの国庫にとっては負担にしかならないわけですが、売電価格を引き上げる形ではなく、初期投資を引き下げる形で下駄を履かせれば、ハードルが下がる分手元にまとまった金のない貧乏人でも気軽にご家庭ソーラーに参入できるため、明らかにより大勢の人が太陽光発電を導入するのではないでしょうか?

さらに、こっちの手法を採用すれば電気代の高騰を防げ、環境も人権も無視して市場を荒らしに来る外国メーカーから日本の製造業を守ることもできます。

…無論、その太陽電池を買い取るためのお金は最終的に増税によって賄われるわけですが、
何処でどのようにして作られた太陽電池だろうがその発電量を一律で買い取るという最終的にダンピング上等な会社が勝つ方法でソーラーの普及を進め、そのための支出を国内の生産者と消費者の両方におっ被せるという明らかに経済を冷え込ませる制度で調達する手口と比べてどちらが健全でしょうか?

まあ、当然のことながら二束三文で作れて半永久的に使える太陽電池なんてのが実用化されれば、そもそもそういういびつな制度という下駄を履かせる必要が無いのですが。

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