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2007年12月29日土曜日

ハンス、フォースを使え

よーし、始めようか先任。
今年最後のコントだ、たまには貴官が始めの挨拶をしたまえ。

はっ、電波解析シリーズえせ科学編「超不都合な科学的真実」
これより開始します!

なんだ?
なん…というか、個性のない台詞だな。

ほっといてください。
それより艦長、イランがロシアの対空ミサイルを導入するをだとか、しないだとかホットなネタもそこそこあるのに、なんだって似非科学本の批判を持ってきちゃうんですか?

先任、貴様は知らないのか?
正月楽するためには年末…

ってか艦長、正月も私をコントに付き合わせるつもりでしょう?

…よくわかったな。
だが、萎えている時間はないぞ。
今この瞬間も、救世主の皮を被った香具師が誤った科学知識を世界に広めるべく水面下で暗躍しているのだ。

言うに事欠いて陰謀論かよ、で、何ですか。
今日は「ソマチット」だとか?

その通り。
例によってケイ・ミズモリは章末で逃げを打っているし、まあ、少々科学的な知識があればソマチットの提唱者であるガストン・ネサン氏の胡散臭さは看破できるだろうが、それをやる前にまず例によって「ソマチットって何?」という話をやろうか。

血液中のゴミなんでしょう?

一般的にはそう言われている。
だが、連中はソマチットとは要するにまあ…ミディクロリアンみたいなもんだと考えているらしい。

いかにもスペースオペラっぽくなってきましたねぇ。
艦長、こういうの好きでしょう?

好きだが、小官とて科学と妄想を混同するほどバカじゃあない。
まず、「超不都合な科学的真実」には、ネサン氏が倍率三万倍で分解能150オングストロームの「ソマトスコープ」という超高性能光学顕微鏡を作って観察した結果、それまでは血液中のゴミとして無視されてきたものが、実は生物であった事が判ったという話が出てくるんだがまあ、この時点で「ソマトスコープ」とやらはかなりデタラメっぽいということが判る。

スペックから判るんですか?

うむ、光学顕微鏡ってのは、一般的な「いわゆる顕微鏡」の事だ。
可視光線の波長は390ナノメートルから770ナノメートルと言われていて、どんなに性能の高い光学系を使ってもその分解能の限界は大体100ナノメートルくらいだと言われている。
…まあ、学生実験で使うような光学顕微鏡なんかだと、だいたい500ナノメートルあたりでどうも怪しくなってくるんだけどね。
この辺の問題もあるから、一般的な光学顕微鏡の倍率は大体五千倍くらいまでになっている。
これでも位相差顕微鏡や微分干渉顕微鏡なんかを使えば、生きた細胞の内部にミトコンドリアがあるのが観察できる。
で、ちょいと調べてみたら、ソマトスコープには紫外線が使われているらしいなんて話もあったんだが、理論的に分解能の数値は照明に使用される光の波長と対物レンズの開口数で決まるんで、X線でも使わん限り倍率三万倍で分解能150オングストロームってのはちょっとあり得ないだろう。
ちなみに現在のX線顕微鏡の分解能の記録は15ナノメートル。
1ナノメートルは10オングストロームだから、「ソマトスコープ」にはX線顕微鏡並みの解像度があるという話になる。

たしかに、んなもんを20世紀の半ばに開発しただなんて、かなり嘘くさいですね。

で、その「ソマトスコープ」での観察によって発見された
「ソマチッド」のライフサイクルを観察した結果、人間が病気になると、ソマチッドのライフサイクルが変化して異常な状態になる。
…では、「健康なソマチッド」を病人に投与してやれば、健康になるんじゃないかってのが、ネサン氏の考えで、これに基づいて樟脳から免疫強化製剤「714X」というものをこさえたんだそうだ。

無茶な論理展開ですね、例えば珊瑚の白化現象なんかはストレスを受けた珊瑚虫の体内から褐虫藻が逃げ出して起こるらしいですけど、
「そこで珊瑚虫に褐虫藻を注射しよう」ってくらい乱暴だ…

うむ、それゆえ最近では、ソマチッドは病気の原因ではなく、病気によって悪化した体内環境から逃げようとして変態するんだという説だとか、極端な例では、ソマチッドはやはりゴミで、病気によって体内の水分子の性質が変わったのに反応して形を変えるのだという説もある。

まるでなにかの宗教みたいですね。

ソマチッドに対する宗教論争はこの際置いといて、本章ではネサン氏に影響を受けた福村一郎氏によって確認されたとするソマチッドの性質が七つほど挙げられているな。
1.ソマチッドは地球上最古の原始生物であり、当時地球上にあった元素のうち水素(電子)をエネルギー源として活動した。
2.ソマチッドは不死であり、最近やウイルスとは別の生命体である。
3.ソマチッドは環境の変化に応じて、種々の形態をとり、その環境が気に入らない場合、周囲の基質を利用して殻を形成するという避難行動をとる(休眠状態で数千万年以上は生きながらえる)。
4.ソマチッドを活性化することは、宿主を健康にすることと一致し、人の免疫力の強弱と血漿中におけるソマチッドの増減は比例する。
5.人の白血球はソマチッドを抗原とはみなさない。
6.ソマチッドは尿から排泄される。
7.ソマチッドはDNAの基質であるタンパク質を合成する。

「ソマチッドについての標準理論」ですらここまで酷いのか。
2は不死である時点で既に生命の定義には当てはまらないし。

まあ、DNAの基質がタンパク質だなんて言ってる時点でね。
本当はDNAは塩基とリン酸と糖から出来ているんだが。

…艦長、この本って11章もあるんですよね?
あと9回もこんなデムパを扱わなきゃいけないんですか?

たしかに、ここんところデムパばっかで少々疲れたな。
来年から電波解析は隔週くらいにするか?

いいんですか?

ただし、上半期はずっとやりつづけることになるぞ?

難しい選択ですね。

一応、今年はこれで終わりだ。
みなさん良いお年を!

来年もよろしくお願いします!

うーん、ハンス、お前さんには「あけましておめでとうございます」
くらいボケて欲しかったんだが。

いや、最後くらいきちんとしましょうよ?

2007年12月24日月曜日

反戦軍事学を笑う その弐

ムグムグ…先任、そろそろ始めようかムグムグ

ハフハフ…そうですね艦長ハフハフ…でもその前に
ハフハフ…鶏肉を食べるのを中断しましょうハフハフ

んだなムグムグ… ぬんがふっふ! ゲフン…
世間様はクリスマスですが、皆様いかがおすごしでしょうか?

しかし艦長、クリスマスに合わせるのは判りますが、一昨日電波解析をアップロードしたばかりでもう始めるんですか?
普通にネタでもいいと思いますよ。
海上自衛隊がミサイルの迎撃に成功したり、ロシアのステルス機の話が出たりしたじゃないですか。

「正月ゆっくりしたければ、年末に倍働かなければならない」というのをおまえさんは知らないのかね?
なにしろ「反戦軍事学」はそうそう問題ではないのだが、
「超不都合な科学的真実」は十一ものデムパが縦深陣を布いているのでな、だいたいこのブログが一周年を迎える頃まで貴官の間の手が要るのだよ、だからネタを早く消化してしまおうじゃないか。
というわけで…電波解析コント「反戦軍事学を笑う 第二部」!

ヤヴォール。第二部は中級編という事で、
「軍事問題はさほど難しくない、毛嫌いせずに
 一般レベルくらいの知識は持って欲しい」
という事を言ってるような雰囲気? …その内部構成としては
一.誤解されやすい軍事用語
二.海軍の基礎知識
三.イージス艦VSテポドン
四.軍事用語は、なぜややこしいのか
となっていますね。
しかし、自分が読んだ感想としては、一般の読者に
「軍事は難しくないんだよ、簡単だよ(はあと)」という話をやりますよと宣言している割には、枝葉の軍事用語のうんちくにばかり終始していて「そもそも軍事とはこうである」という話が殆ど無かったですね。
…これは艦長が不燃ネタと仰るのも判ります。

うむ、軍事系の雑学を開陳して「軍事は難しくないんだよ」とやるのならば、ネタごとに小分けにしてまとめ、
「林信吾の軍事ミニ百科」とでも名付けて本編外の場所に付録として添付するという形式をとった方が読者には親切だったろうね。
まあ…ノンフィクションにしては突っ込みどころ満載のコーナーになっただろうが。
逆に「軍事の基本を解り易く説明しましょう」と宣言したのならば、文明が始まった頃には既に戦争があったという辺りから解説を始めて、「現代の軍事に関する一般論」まで持ってくるべきだったろう。

ちなみに、艦長はそのテの話どのくらいできますか?
基本的に技術屋でおまけにネタしか言わないような方だから、あんま期待はしませんけど…

そうだな、義務教育でも使う日本史の教科書には、縄文時代が終わって弥生時代の農耕文明が始まるとまもなく、村と村との間で抗争が始まり、豪族が現われ、その豪族をまとめる形で領主が出てきてやがてヤマト王朝が日本をほぼ統一したってな事が書かれてる筈だ。
で、一般的に人類史のセオリーによると、地球上に最初に農耕文明が
誕生したのが現代のイランの辺り。
…大体紀元前五千年頃の事だって言われている。
それからおよそ二千年後にシュメール人が現われた。
彼等のルーツ自体謎だと言われているが、人類史に始めて文字や暦を持ち込んだのが彼等だとの事だ。
ちなみに、旧約聖書によると、シュメール人の都市国家「ウル」に在住の資産家だったアブラハム氏は、デムパを受信した結果、親戚を連れて旅に出て、以下略でイスラエル人の歴史が始まったらしい。
この時代のシュメール人の都市は神殿を中心に作られており、周囲は城壁で囲まれていた。
外敵がいなけりゃ城壁は必要ない…おそらく、この時代に既に戦争が行われていたのだろうと推測されている。
つまるところ、文明はその誕生のときから戦争を内包していたわけだな。
「人類の歴史とは戦争の歴史」なんて言われるのは、この辺にも根拠があるんだろう。
…もっと聞きたい?

いや、日付が変わっちゃうんでいいです。

あ、そう。
最低でも「七人の侍」を引き合いに出して、降り掛かる火の粉を振り払うだけでも軍事力は必要。
…そもそも戦争というものにこれといった正義と悪があるわけではないというのはガノタすら知ってる一般認識ですよね?
くらいまではやりたかったんだが、まあいいだろう。
とにかく、第二部の内容は軍事に関する一般論と軍事用語の解説が渾然一体となっていて、読解力の乏しい人間には不親切だ。
こと軍事用語の解説に関しては、あっちこっちで叩かれているように間違いが満載で、ネットでも「もっと資料掘ってから本を書け!」と言われているまさにその通りなんだ。
ここみたいな「個人のブログ」に書くのなら、あの程度のクオリティでも問題無いと思うが、それでも、コメント欄で間違いを指摘されたら素直に認めるくらいの事ができないと…燃えるだろうね。

……

ところでハンスはこの章の間違いでどこが気になった?

軍事のうんちくをやってる割には、あっちこっちで乱暴な論理展開が目立つんですけど、テポドンの一件を人工衛星の打ち上げ失敗と見るのが妥当だと言ってるのが気になりましたね。
自分はあの騒ぎのとき、テポドンの事を人工衛星と主張していたのは北朝鮮だけだったように記憶しているんですが。

うん、それまで散々日本海へ向けて
(宇宙ロケットではなく)「ミサイルの実験」をやっていたのに、日本列島を飛び越えたらいきなり人工衛星だと主張し始めるのはいかにも不自然だよな。
なのにそれをまんま信じるなんてジャーナリストとしてアレだよな。
おまけに、サッカーの中継中にテレビに流れたテロップに過剰反応してテレビ局に凸しようとするなんてねぇ。
他には?

イージス艦については、この章の中で今のところ弾道ミサイルに対しては手も足も出ないとやってますが、ついこの間みごとにはたき落とせるようになった事が証明されましたよね。
この件に関しては著者を責めるわけにはいかないけれど、この本、第一刷が発行されたのが去年の12月30日…
是非とも時代遅れになった記述を修正した第二刷の発行を期待したいものです。

おいおい、誰がカネを出して買うと思ってるんだ。
…まあ、小官が気になったのは、海軍と空軍の記述だな。
木造帆船の時代まで商船と軍艦の性能の差はさほどのものではなかったって記述はちょっと酷い。
舷側に大砲をアホみたいに並べてハリネズミの如く武装した戦列艦があれば、ちょこまか走り回ってなかなか捕まえられないジーベック艦だとか、この時代でも日進月歩ってほどではないにせよ、各国は強力な艦船の開発に余念がなかった。
こういった研究の結果、蒸気船の登場前夜にはクリッパーのような高性能帆船が登場したし、現代のヨットの原型もこういった時代にオランダで開発されたと言われている。
それに、大鑑巨砲主義のところでも、ノンフィクションだと言っておきながら、航空機の有用性が証明された時代に巨大戦艦を建造する愚を説いているが、当時はまだ「戦艦ダメぽ」ってのは確定ではなかったし、ブロック造船法すら無かった時代に戦艦の建造に一体どれだけ時間がかかると思っているのやら…

言いたい事はそれだけですか?

空軍の記述がまだだよ。
まず、重航空機と軽航空機の区別がはしょられているな。
ミリオタを名乗るのならば、戦史として知っていておかしくないと思うが、戦間期の頃まで主として軽量強力な発動機が確保しにくかった事から、「飛行機」は速度でも航続時間でも「飛行船」には遠く及ばなかったのだ。
これで有名な例はツェッピリンのロンドン空襲だな。
「初期の空軍の仕事は偵察機を飛ばす事だった」と書かれているが、正味の話、偵察機は偵察機でも偵察気球が主流だった。
あと、「陸海に属さない新たな軍を創設する事になるので」憲法解釈の問題から日本は空軍をつくれなかったとも書かれているが、例えばアメリカでは空軍は陸軍から分離する形で出来たし、旧帝国海軍では条約で主力艦船の保有を制限されたもんで、長大な航続力を誇る陸上攻撃機等で火力を補わんとする「海軍の空軍化」という現象があった。
…陸海のどっちかが母体となれば空軍創設で帝国憲法をあーだこうだする必要は無かっただろう。
となれば、問題となったのは主として憲法より旧陸海軍の仲がめちゃ悪かった事じゃないかと思うんだがな。
陸軍とか空母まで保有してやがったし。

終わりましたか?

まーね。
じゃ、残りの揚げ鶏を食おうか。

そうすね…あーあ、すっかり冷めちゃってる。

土曜も「超不都合な科学的真実」で頼むよ。

萎えるような事言わんで下さいよ艦長。

ムグムグ…それじゃあ、ソマチットの話楽しみにしてて下さいね!

もう食べてる!

2007年12月22日土曜日

超ワクチンって…何!

さあ、始まりました!
電波解析シリーズえせ科学編「超不都合な科学的真実」数年前から大晦日にはビートたけしが似たような番組をやってますが、わがブログではホホイシリーズと合わせて年越しでお送りしたいと思います。

やれやれ、やっと始めてくれたか。
…世間様はクリスマスだってのに、何が悲しゅうて野郎二人で
UFO信者の書いた本を読まにゃならんのだ。

あとでパーティバーレル買ってあげるから…

艦長、一人で全部食べて下さいね。

ビッグマックセットの方がいい?

お一人でびっくりドンキーへでも行かれてはどうです?

強がらなくてもいい。先任も今年は一人なんだろう?

いいから、さっさと始めちゃいましょう。

そだね、じゃあ始めようか。
今回扱う第一章は「誘導消失療法」の話になっている。
題名は
「ガン、エイズを治癒させる究極のワクチンが握りつぶされた!?
  ー 治癒率99%の治療法が医薬品業界に与えた衝撃」
というものだ。

なかなかにセンセーショナルなあおり文句ですね。

多少なりとも生物学を知っている人間にとっては、この時点で
「おいおい、マジかよ。」なんだがな…

どれどれ…「臨床実験で実証済みの難病治療はこうして潰された」
冒頭で学説のアウトラインを紹介する前にまず陰謀論ですか。

陰謀論だけじゃないぞ。この章では散々デムパをまき散らしといて、
ご丁寧にも、章末にはこんな文が付いている。
===============================
※本稿は、サム・チャチョーワ博士(Dr. Sam Chachoua)の研究成果や訴訟を報じた米・豪のメディアや彼自身の言葉を参考にまとめたものだ。筆者はジャーナリストとして、海外での出来事を紹介したわけであり、読者に治療等の助言を行う事はできない。
筆者や編集部に問い合わせ頂いても詳細な情報は提供できない旨、ご理解頂きたい。
===============================

艦長、これって…

逃げ打ってるんだよ。このケイ・ミズモリってジャーナリストは。

って事は、この本の読者にはサム・チャチョーワとかいう先生が本物か詐欺師かも判らないって事ですか?

ぶっちゃけ、そういう事だな。
サム先生が本物か偽物かは判らないけれど、陰謀で潰されたんですよという事がこの本の著者がいちばん言いたい事らしい。

いきなり結論出ちゃいましたねぇ。
…もう帰っていいですか?

いや、まだだ。
「誘導消失療法って何?」という問題が未解決のままじゃないか。

このコーナーで取り上げた以上、結局インチキなのでしょう?
ならペテン師認定でいいじゃないですか。自分はもう疲れました。

この企画そのものを否定するような事を言うんじゃないよ、
いいからそこに座って聞きなさい。

はいはい、真剣白刃取りでも龍昇閃でも…

まだそのネタを引きずるのか。
まあいい、翻訳者(多分この本の著者その人)のスキルがアレなもんで、この本のデータからではちゃんとした事が言えんのだが…
なんでも「誘導消失療法」の生みの親として紹介されているサム先生は、父親が脊髄ガンを患った事をきっかけにガン研究を始めて医者になったらしい。
で、動物の免疫をワクチンとして人間に移植し、ガンやエイズを治療しようと考えたらしいんだな、つまりは血清療法だな。

血清療法っていうと、ヘビに噛まれた時に使うアレですよね。
ガンやエイズってんな注射一本で治るようなもんなんですか?

ところが大笑い、本文中ではこう説明されている。
===============================
 例えば、HIVの場合は人間にだけ感染しエイズを発症する。実験を行った動物には、その感染を退ける抵抗力が備わっていた。それゆえに、動物をHIV感染・エイズ発症させて検証する「動物モデル」がなく、そのことで医師たちは頭を抱えてきたのである。
ちなみに、馬、猫、犬などの動物も、人間のガンに対して抵抗力を備えている。
 そこで、サムは逆転の発想をした。それならば、どうしてエイズやガンのワクチン生成のために、動物の免疫反応を利用しないのだろうか、と。
===============================
この時点でサム先生か著者のどっちかに生物学の知識が決定的に欠如してる事が判るんだが、ハンス君には判るかな?

人間のガンって、そもそも「変異した人間の細胞」ですよね?
ならば犬猫の体内でこいつが生きられないとしても不思議は無いんじゃないですか。
逆にニャンコのガン細胞を人間に植え付けても、常識的に考えれば、多分あっさり壊死すると思われるわけで。

そう来たか、いかにも君らしい正論だな。
半分正解だ。実はウイルスに対しても種族の違いが問題になる。
一般的にウイルスの表面にはスパイクというタンパク質のトゲが生えていて、標的となる細胞に接触すると、その細胞のタンパク質にこいつがガッチリ結合する。…このプロセスが感染の第一段階だ。

って事は…

人間に感染するウイルスは基本的に動物の細胞には感染しない。
だから動物の免疫系はコレを異物として一方的にタコ殴りできる。
だが人間だと、免疫系が処理する一方でウイルスは原子炉の中の中性子並みに殖えて殖えて殖えまくる。
ヘビやサソリの毒は体内で増えたりしないし、抗体ができる前に命を失う可能性の方が高いから、馬に作らせた抗体で中和するんだがね。

なるほど、そういう事情を知ってたら、普通は動物に作らせた抗体が患者が体内で作ったもの以上に効くなんて考えないですよね。

だが、ここからデムパがエスカレートする。
結核の患者がガンに罹らないという話をもってきて、病気にはけんかをする組み合わせがあるのだという事を言い出し、人間には病気を起こさないバクテリアをがん患者に投与すれば、そいつがガン細胞に結合して人間の免疫系がこのバクテリアを殺す時にガン細胞も巻き添えであぼーんするというのが誘導消失療法IRTなのだと。
遺伝子レベルで効くから、(いつの間にんな話になったんだ?)心臓病や喘息、ボケにも効くのだと。

このパターンって、まさしく悪徳商法じゃないですか。

そう、ゆえにここから急転直下となる。
メキシコのとあるクリニックで偽ワクチンが処方されて死者が出た事をきっかけに、サム博士は怪しいということで、学会は彼の研究成果を否定する方向へ動き始めた。
そこで彼はシーダース・サイナイ・メディカル・センターCSMCを相手取って裁判を起こし、2000年8月にロサンゼルス連邦裁判所で賠償金一千万ドルの支払い命令が出た。

ちょっと、裁判に勝ったからといって科学的に正しい事にはならないじゃないですか!
猫を電子レンジに入れて賠償金を手に入れた人の話もあるわけだし。

猫チン事件の真偽についてはともかく、サム博士が怪しい人物だってのは事実らしい。
実際CSMCが控訴すると、2001年9月には賠償金が初期の負担分である一万一千ドルに減額されたそうだ。
ところがこの章の締めくくりの部分はこう始まっている。
===============================
 どうやら世界中に監視機関が存在し、効果のあり過ぎる治療法の発見や、歴史を覆す発見が行われると、そのような研究者の信用を落とす手段が瞬時に講じられ、専門の研究機関はそれに関わらないよう通達を受ける現状があるようだ。そもそも、医学的大発見をするのが大きな医療機関の研究者に限られていること自体、不自然だ。チャチョーワ博士のように、自らの努力で資金を得て、研究を続けてきた個人の発見が大きく報道されることはないのである。医療機関自体が一種の監視機関として機能し、そのような機関に所属せずして、世界に研究成果を公表することすら困難な状況が存在するのはまことに残念なことである。
===============================
まあ、こんな陰謀論など反証を示すのは簡単なことでね。
例えばイタリア系アメリカ人のオドーネ夫妻は息子が患った遺伝病を克服するため、個人で研究を行って画期的な治療法を発見した。
この辺の詳細は「ロレンツォのオイル」という映画にもなっている。
「オイルは儲かるから潰されずに済んだんじゃないか」という反論も予測されるが、そもそも「オイル」の発見は従来のセオリーを覆すもので、当初は専門の医学者や患者の団体とも対立した。
だが、実際に有効であることが判って着実に理解者が増えている。
サム博士の誘導消失療法も「本当に有効である」ならば、世論を動かすほど支持者が現れないのは不自然だよな。

ってか、サム・チャチョーワ博士は今はガンの研究をやめて今後はアジアやアフリカのエイズ患者や心臓病患者のための研究を始めたいと考えるようになったって書かれてますけど、これって、詐欺師が河岸を変えたとも取れますよね?

だな。
ちなみに、小官はこの特集を組むためにちょこちょこと下調べをしてみたんだが、「誘導消失療法」に対して肯定的に書かれている記事は大体がこういった感じのデムパで、あまり参考になるデータは得られなかった。で、この章の中でちょっと言及されている「丸山ワクチン」だが、これはよりメジャーな話みたいで、ウィキにも載っている。
で、ウィキでは丸山ワクチンの有効性について
「交絡因子によるバイアス」が存在した可能性が指摘されている。

何ですか、その「交絡因子によるバイアス」って

北杜夫の「どくとるマンボウ航海記」に酒をたらふくかっ喰らえば、船酔いにはならない。もしも倒れたとしても少なくともどっちでやられたかは判らないという話があるだろ、要はそういう話だ。
おまけに例の陰謀論の結びの部分はこうなってるし。
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 そもそもマラリアが存在した地域にはガンという病気はなかった。ひとたびマラリアを排除するために、沼地をなくし、蚊を退治すると、ガンの発生率は高まった。最終的に人間の病気治療に答えを与えるのは、自然界に存在する動植物にある。しかし、その薬を生む地球環境は、今も破壊されつつある。自分の父親をガンで亡くしたばかりか、救えたはずの多くの人々を助けられず、医療業界から執拗な攻撃を受け、健康までも害してきたチャチョーワ博士だが、彼が残してくれたものは、人類の生存には自然環境との共生が不可欠であるという重要なメッセージなのかもしれない。
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この博士、結局ガンの親父は亡くしてるんですね。
オドーネ夫妻は根治こそ無理だったものの、見事に病気の進行を食い止めて息子の命を救ってるのに。

ってか、マラリアが流行っているからガンが発生しないという話自体医学的にはめちゃめちゃ乱暴な論理だよ。
例えば、戦前まで日本人の死ぬ病気と言えば「結核」だったが、今では「ガン」になっている。
が、その間に平均寿命は三十年近く伸びている。
「日本人は本来ならば、ガンではなく結核で死ぬべきだった」と言うのなら、それはそれで一応「超不都合な科学的真実」だがね。

酷いブラックジョークですね、艦長。

私じゃないぞ。このケイ・ミズモリってジャーナリストのジョークのセンスが優れているんだ。

2007年12月15日土曜日

人斬り包丁概論

ハンスどん、大変でごわす!
エゲレスで廃刀令が出るでごわす!

艦長ぉ…何なんですかいきなり。今週は「超不都合な科学的真実」でコントをやる予定だったんじゃないですか?

んな不燃ネタは来週まで保留だ。今回は日本刀の話をするぞぉ〜!

無駄に燃えてますねぇ…
まったく、この人はわけのわからんモノに変な情熱を注ぐから

さて、ウィキ等で調べれば日本刀についてある程度の一般論は仕入れる事ができるだろう。
で、現代でもまあまあ論争のあるところなのだが、
「実際日本刀ってどんだけ強かったのよ?」
という問題を扱ってみよう。

はいはい、えっと…どれどれ
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日本陸海軍が将校の主要兵器として軍刀を採用し続け、サーベル様式の軍刀拵えに日本刀を仕込むのが普通となり、さらには日露戦争における白兵戦で近代戦の武器としての日本刀の有効性が確認され…
===============================
日本刀をサーベル拵えにしたって…もしかして、某空想海賊アニメで世界政府の軍隊が標準装備してる「あの軍刀」ですかね?

多分元ネタはそのへんだろうね…って、ネタに走るなよハンス。
大体お前さんはツッコミ担当じゃないか。

じゃ、艦長がボケて下さい。

ああ言えばこう言う…まあいい。
結論から言ってしまえば、戦場に於いて日本刀は必ずしも有効な兵器とは言えなかった。

えっ、でもけっこう「最強の刃物」ってイメージがありますよね。
そりゃ演出や使う人の技量なんかもあるでしょうが、「海皇記」なんかでも、鋼鉄製の甲冑を着込んだ傭兵を一瞬で両断しちゃってるし。

よくよく武闘系の漫画を読むんだねぇ、おまえさんは。
だが、どんなに良く切れても、届かなければ意味が無い。
仮にライトセーバーのようなブツであっても、接近戦兵器である以上相手を攻撃するためには会話が出来るくらいの距離にまで近付く必要がある。

火縄銃の三段撃ちでアウトレンジされたら、どーしょーもないわけですか。…ロマンのかけらも無い話ですね。

軍人がロマンですと?
そんな寝言を言うようだから二尉止まりなのです貴方は。

銀英厨乙。
じゃ、「日本刀の有効性」って一体何なんです?

先任、その「銀英厨」という発言は覚えておくから、後で甲板へ出るように。
俺がサーベルで斬り掛かるから、卿にはケブラー製の手袋で真剣白刃取りをやって貰う。

わかりましたよ、あとで真剣白刃取りだろうが龍昇閃だろうが気が済むまで付き合ってあげますから、本題に戻って下さい。

日本刀の問題点。
それは一にも二にも「間合いが短い」という事に尽きる。
事実、日本刀に槍のように長い柄を付けた長巻が作られたりだとか、また戦国時代の武家では実際に槍の有効性が大きく評価されて、様々なタイプの槍やこれを扱うための流派が出現している。

じゃ、日本刀って結局何だったんです。
近代の軍隊で言うところの軍用拳銃みたいなものですか?

惜しいね、実は日本刀が兵器として本格的に活躍し始めたのは、応仁の乱の頃だって言われている。
この頃、みかどのおわします京の都では足軽によって貴族同士の代理戦争が行われていた。
ただし、この時代の足軽ってのは、胴巻きを着て槍を持ったようなのではなく、普段は民間人に紛れ込んでいて、事を起こす時に集団で武器を手に貴族の邸宅を襲う…といった感じだったらしい。
で、こいつらの主兵装が「日本刀」だったんだな。

民間人に偽装した貴族の私兵がねぇ…今で言うとヤクザ屋さんが政治家の手先となって東京で抗争をしてたようなもんか。
そりゃ国が乱れるわけだわ。

その後、日本の政情がある程度安定すると、日本刀は今度は大陸へ輸出されるようになる。
前期倭寇の海賊達や秀吉の朝鮮出兵といった事例によって日本刀の威力が大陸でも認識された事情があったからなのだが、その後これらの国々では倭刀や苗刀といった日本式の刀剣が製作され、軍隊の正式装備にもなった。

そういえば、チェオクの剣なんて韓流ドラマがありましたけど、あの後どうなったんでしょうね。
まあ、韓国と言えば最近は武士道だけでなく漢字や儒教の元祖まで主張し始めて、中国にも顰蹙を買ってるそうですけど、自衛隊と中国軍を同時に相手取る事を考えれば、国家予算に対するあの重武装は納得できますね。

嫌韓厨乙、いちいち相手するのも面倒だから次の時代に進むぞ。
ラストサムライの時代、西南戦争の時。西郷の薩摩軍は田原坂にて政府軍に多大な損害を与えた。これに対抗するため政府側は当時、元士族の多かった警官から抜刀隊を組織して薩摩軍を退けた。
ここで明暗を分けたのがやはり日本刀だった。

あ、…冒頭の西郷どんのネタってこれの伏線だったんですね。

たまたまだよ。たまたま!
さてと、ここまでの例で大体気付いたと思うが、
「日本刀が有効な状況」って何だと思う?

人を斬る状況。

ハンス君、手袋は使わずに真剣白刃取りにチャレンジしようね。

すいません、真面目にやります。
えっと…市街戦でしょ、山野戦でしょ、何というか障害物の多い地形での戦いが多いですかね。

そう。飛び道具にしろ長手の武器にしろ懐に飛び込まれると弱い。
平地で集団戦をやるときはきっちりと密集陣形を組んで敵を寄せ付けないが、市街地や雑木林に入り込むと、障害物が多くて密集陣形を組むわけにはいかないし、見通しも悪いから、懐に飛び込まれる危険性もがぜんアップする。
大体、障害物の多い場所では、長手の武器は取り回しがアレだしな。

あと一対一でやり合う状況なんかも考えると、槍や長刀なんかは横にいなされて懐に飛び込まれるともうお手上げですもんね。

そう、武器には「得意な距離」というもんがあるんだ。
ウィキの「倭刀」の項目にも似たような話が載ってたが、
ヨーロッパでも「銃士隊」というのが作られた。
いわゆる三銃士のアレだが、長射程のマスケット銃と接近戦用のレイピアを組み合わせて、両者の死角を補った当時の最新戦術だった。

はあ…なるほどね。

ただ、敢えて言うならば日本刀はバリバリの接近戦武器なので、市街地では特に有効性が高いと言えるだろう。
明治時代の廃刀令然り、今回のイギリスの件も然り。
まあ妥当と言えば妥当な判断だが、日本刀を悪用した事件が百件というのは…「剣」なんだから危険なんだってのは判りそうなもんだけどやっぱアレかな、日本で厨房がナイフ振り回して警察の厄介になるのと同じなんだろうか?
どう思うよ先任。

サーベル振り回したがるような艦長には聞かれたくありません。

さよけ。

とにかく、次回こそは予告通り「超不都合な科学的真実」ですからね?

あい、判りんした。

2007年12月8日土曜日

反戦軍事学を笑う その壱

(ナレーション)クリスマスを控えたすがすがしい土曜日の朝、この艦の副長ハンス・シュミット二等厨尉が趣味の本でいっぱいの館長室を訪れるところから話は始まる…

艦長、何をしておいでです?

先任か… 
いやな、どうも私の利用しているプロバイダーから2ちゃんを荒らしたボケがいたらしくてな、アクセス規制がかかっとる… 
実にけしからん。

仕事にもその姿勢で取り組んでいただけると助かるのですがね。

で、何の用だ?

何の用だは無いでしょう。私にこんな本を読ませといて。

そうだったな、では電波解析コント「反戦軍事学を笑う 第一部」!

えっ、頭の67ページだけで良かったんですか?

ぼう、あんな本をまるごと全部読んだのか、勉強熱心だな。

ちょっと、そんな事何も聞いてませんよ!?

不平はその辺にしてさっさと始めてくれ。

そですか。えっと、艦長はまず90式戦車の記述に突っ込まれるかと思いますが、自分が気になったのは19ページのこの部分ですね。

===============================
 恵まれない環境で育った青年は、軍隊に志願することで、とりあえず衣食住を保証され、運転免許その他の資格を取得することで、ようやく社会的な競争に参加できるようになるかも知れない。「国防経験者」だの「二選抜」だのというのも、もちろん創作だが、あり得べき未来図だと、私は思っている。
===========================以下略=

こういった権力側の人間が国民の個人情報を悪用するって妄想を
「もちろん創作だが、あり得べき未来図」ってのは、いかにもどっかで聞いたような論理展開だと思います。

ハンス・シュミット二等厨尉、貴様はなんだってそんなにクソ真面目なんだ? 先週、反戦軍事学は「フィクションとして論評します」と私が言ったばかりじゃないか。
そもそも第一部のほぼ半分はフィクションだろう、こんな調子では先が思いやられるぞ。

はっ、 すいません。では失礼して…
林ィ!この馬鹿者。戦争映画の見過ぎだ、歯ぁ食いしばれ!!

精神注入ッ!!

あいたっ!何すんですか艦長!!

馬鹿者は貴様だハンス。
それではホホイ大先生がフルメタ厨である事しか判らぬではないか

は、申し訳ありませんでした。
では艦長、90式戦車についてのツッコミをお願いします。

うむ、この本にもある通り90式戦車は情報の収集と共有の能力、
即ちC4Iの面で遅れがあるともっぱらの噂だ。
だが、「戦車の性能」とは偵察や通信ではない。無知な者はここであっさりダマされる。
参考までに言っておくと、90式は17年前に登場して以来殆ど進化していないにも関わらず、世界で三番目に強い戦車と言われている。
火力・装甲・機動力で世界レベルの性能を有するばかりではなく、
慣性誘導装置を組み込んだ火器管制システムにより、全速力で走行中に放った弾丸で初弾命中が期待出来る… 
って、ハンス三味線弾くんじゃない!

艦長、饒舌ですねぇ。

いいかげん「俺の話」をさせてくれ、ホホイ大先生は憲法が改正されて「自衛隊」が「日本国国防軍」になっても、徴兵制は復活しないと言っている、この点に異論は無い。だが…

だが?

気付かんか?
第一部の約半分を占める日本国国防軍のシュミレーションとやらでは大体の人は二年間軍人をやったらさっさと辞めて社会復帰するという事になっている。
志願するか否かは個人の自由意志に任されているという設定だから、そりゃ徴兵制ではないだろうが…

じらさないではっきり言って下さいよ。

徴兵制シリーズでも読めば一般人にも判ると思うんだが、そもそも徴兵制が廃れつつある理由ってのは、

1.徴兵をやると、将来有望なインテリ書生も、軍隊内で絶対問題を起こすに違いないちんぴらも十把一絡げに入隊して来るので、社会にとっても軍隊にとっても損失となる。

2.戦闘機やイージス艦に限らず、現代兵器の扱いには習熟を要するにも関わらず、次々に入隊しては二年かそこらで辞められてはマトモに使える兵隊が育たない。

3.そもそも、平時の軍人は穀潰しに他ならないのに、労働力であり納税者でもある若者をわざわざ軍人にしてメシを喰わせるというのは国にとって負担以外の何物でもない。

…とまあ、こんなところだろう。で、まず問題になるのは2だ。
想像してみろ、貴様の部下の半分が「アルバイトの軍人」だったら…

なんだか胃が痛くなりそうな話ですね。

いかにも、無能な味方は有能な敵より恐ろしい。
1と3についても、一見このシュミレーションでは問題にならないように見えるかも知れないが、生活保護を受けていた者、学力だけでは出世出来ない者が、「国防経験者」という資格を手に入れるためだけに二年間だけ入隊するという話になれば、

1.使えない奴が大挙して軍に押し寄せる

3.その使えない奴に二年もメシを喰わせ、就職や年金の面倒も見なくちゃならない

とまあ、軍隊から見ればこういう話になる。
…一体いくら国防予算が必要になるんだろうね。

なるほど、フィクションにしてもあまりにも不出来ですね。

ちなみに、現代兵器と「徴兵されたアルバイト軍人」の相性が悪い事については既に実例がある。
1966年10月26日の早朝、北ベトナム沖にてアメリカ軍の空母オリスカニーは艦載機の発進準備をしていた。
艦上では艦載機の兵装を取り替えるため、発光弾を取り外し、弾薬庫へ格納する作業をやっていた。
事件の発端となったのは二人の間抜けな水兵だ。
「慣れ」とは恐ろしいもので、こいつらは本来手渡しで運ぶべきものをポイと投げてはキャッチ、ポイと投げてはキャッチ。

まさか…

左様。ポイと投げて取り損なう。こないだ火災現場で野次馬がベランダから落とされた赤ん坊を取り損なったようにな。

艦長、そのネタは不謹慎です。

赤ん坊を落っことせば意識不明になるが、発光弾は信管が作動する。
プシュシューとか言いだすから、びっくりしたバイト君は、そいつを弾薬庫へ放り込んでバタン!
…本当は信管が作動してから火が出るまで大体20秒かかるから、海にでも投げ捨てれば良かったんだけどね。

バカだぁ、こいつら…

当然ながら、弾薬庫の中で誘爆が発生。スプリンクラーが作動するがあいにく発光弾はマグネシウムだ。水素が発生して火炎と一緒に格納甲板へ流れ込む。でもってそこら辺の可燃物に引火して大惨事。
火災は数時間後に鎮火し、オリスカニーは沈没こそ免れたものの、
結局航空機6機が損傷し、乗組員は44人も死んだ。

うちは潜水艦だから、そんな事案があったら全員死亡確定ですね。

最近も、演習場から帰る途中の国防ウーマンがファミレスに突っ込んだ話があった事からも判る通り、元来軍人とは社会勉強の片手間に勤まるような仕事ではない。
文字通り「制服を着た公務員」なのだからな。
つまるところ適性が無きゃいかん。
ゆえに、憲法が改正されてもそれがホホイ先生のシュミレーションのような事態を招くとはきわめて考えにくい。
だいたい、すぐ軍人を辞めるような奴に制服を着せるなんざ防衛予算の無駄になるだろうが。

なるほど、日本人の人件費は世界トップクラスですもんね。

さてと、来週は「超不都合な科学的真実」だったな。
小官にとっては2ちゃんのアクセス規制の方が不都合なんだが…

いいかげん、その話題から離れて下さい。

2007年12月1日土曜日

副長再び もしくはホホイ作戦ミーティングの回

 テクノバーンの報道によると、韓国はLG電子の携帯電話が爆発して人死にが出たそうです。
そういや何年か前、パソコンのバッテリーが火を噴くとかで回収騒ぎになった事がありましたが、少なくともマッキントッシュのものに関してはLGケミカルの製品だったと思います。

何と言っても、リチウムイオン電池の大容量化には高度なノウハウが必要とされるそうですからねぇ…
実際に開発に携わった技術者の書いた本によると、ラスト・ストローという例えがありまして、「まだまだイケそうだな」と思って充電を続けてくと最後に僅かな負荷を加えただけであぼーんするそうです。

それはさておき、レールガン実用化の日がまた近付きましたね。
テクノバーンの記事には
「1年前まで実験を行ってきた従来型の実験レールガンシステムの射出能力は8メガジュールで、重量が3.2キログラムの小型キネティック弾頭(Projectile)を射出させることしかできなかったが、海軍研究所はレールガンの開発特別プロジェクトチームを発足させる事で短時間に一気に射出能力を4倍に向上させ、実用化に大きく前進させる事に成功した。」
と書かれており、こいつの射出能力が倍になれば、一応レールガンの実用化に目処が付くみたいです。

ところが、この記事のオチは
「しかし、このレールガン・システム、250マイルも離れた距離にある目標にどうやって正確に着弾させることができるのだろうか?」
となっており、こんな事書くテクノバーンの記者には
「ちょっと!今しがた小型キネティック弾頭って…」
と突っ込みたくなる事甚だしいわけです

副官       :艦長、少しよろしいですか?
ハインフェッツ  :ハンス、お前居たのか?
副官(以下ハンス):ええ、ええ、ずっと居ましたとも。
         全然出番が無いから干されたかと思いましたよ。
         ってか、私ハンスって名前だったんですね!

ハインフェッツ:コントの設定の話はいいとして、用事は何かね?
ハンス    :本棚に置いてあるその本は何なのですか?

「朝日新書 反戦軍事学 林信吾著」

ハインフェッツ:こないだデパートの本屋で見つけて買ってきたのだ
       なんでも「おかげさまで朝日新書は一周年」だそうだ

ハンス    :違うでしょう、何だって今更「反戦軍事学」
       なんですか?

ハインフェッツ:たしかに、ネタとしての面白さを求めるのなら、
       半年も前に終わった本は古すぎるだろうね。
       が、今まで話に聞くだけだった本の実物がこうして
       やっと手に入ったのだ。
       これで、ネタなり論評なり好きに出来る。
       きちんと金を出して買ったものだから、クダクダ
       言われる筋合いも無い。
       我々なりの「ホホイ語補完計画」ってわけだな。

ハンス    :それは…「ホホイ語補完計画」の意味が間違ってる
       大体そういう事は今までに艦長以外の人が大勢やって
       きたんじゃないですか?

ハインフェッツ:それはその通り。
       「平和主義を唱えるのなら軍事について
       正しい知識を持ってほしい」という至極真っ当な主張
       をしてるくせに、軍事についての誤った知識が
       てんこもり…というのは叩かれて当然の内容だし
       著者の電脳空間での素行が素行だから、
       弁護のしようも無いわけだが…

ハンス    :大体、艦長のレベルじゃ電波解析とかやっても
       90式戦車の記述に突っ込むのが限界
       じゃないですか。

ハインフェッツ:言ってくれるじゃないか、
       ま、小官は元が機械屋だからね。
       だがこう考えてはどうだろう。
       この本を「ノンフィクションではなくフィクション」
       として論評するというのは?
       今まで誰もやった事の無い切り口だと思うが。

ハンス    :いや、いかにも誰か考えそうな事だとおもいます。
       で、こっちの五次元とかいう本もその流れですか?

「五次元文庫 超不都合な科学的真実 ケイ・ミズモリ著」

ハインフェッツ:Nein,この本は元々デムパだし、
       マイナーだから、科学的に批評してる人も
       多くはなさそうだ。
       だからそうひねらなくても電波解析の素材にできる。

ハンス    :そうですか…
       なんだか、とりあえずなんでもかんでも持ってきた
       ってな感じですね。

ハインフェッツ:そうでもないぞ。これで我がブログの看板である
       「軍事・SFそしてちょびっと政治」がカバー出来る

ハンス    :なんだかんだでうまく纏めましたね。

ハインフェッツ:まあ、遅筆故に読者の皆さんにはご迷惑をかける
       かも知れないがな。

ハンス    :読者、いるんだ。

ハインフェッツ:国内のミリヲタでブログ持ってる人は一応
       チェックしてゆくという程度のものらしいがね。
       ブロガーは名無しだとコメント出来ないから
       中々認知する機会が無いが。
       というわけで… 読め!

ハンス    :私が論評するんですか?

ハインフェッツ:素人にも取っ付き易いようにコント形式を
       採用する事にしたのだ。
       だから卿にもこれの内容を飲み込んでおいてほしい。
       では次回、刮目して待て!

ハンス    :部下が出てきたとたん、やたら偉そうだよこの人