このブログを検索

2007年12月8日土曜日

反戦軍事学を笑う その壱

(ナレーション)クリスマスを控えたすがすがしい土曜日の朝、この艦の副長ハンス・シュミット二等厨尉が趣味の本でいっぱいの館長室を訪れるところから話は始まる…

艦長、何をしておいでです?

先任か… 
いやな、どうも私の利用しているプロバイダーから2ちゃんを荒らしたボケがいたらしくてな、アクセス規制がかかっとる… 
実にけしからん。

仕事にもその姿勢で取り組んでいただけると助かるのですがね。

で、何の用だ?

何の用だは無いでしょう。私にこんな本を読ませといて。

そうだったな、では電波解析コント「反戦軍事学を笑う 第一部」!

えっ、頭の67ページだけで良かったんですか?

ぼう、あんな本をまるごと全部読んだのか、勉強熱心だな。

ちょっと、そんな事何も聞いてませんよ!?

不平はその辺にしてさっさと始めてくれ。

そですか。えっと、艦長はまず90式戦車の記述に突っ込まれるかと思いますが、自分が気になったのは19ページのこの部分ですね。

===============================
 恵まれない環境で育った青年は、軍隊に志願することで、とりあえず衣食住を保証され、運転免許その他の資格を取得することで、ようやく社会的な競争に参加できるようになるかも知れない。「国防経験者」だの「二選抜」だのというのも、もちろん創作だが、あり得べき未来図だと、私は思っている。
===========================以下略=

こういった権力側の人間が国民の個人情報を悪用するって妄想を
「もちろん創作だが、あり得べき未来図」ってのは、いかにもどっかで聞いたような論理展開だと思います。

ハンス・シュミット二等厨尉、貴様はなんだってそんなにクソ真面目なんだ? 先週、反戦軍事学は「フィクションとして論評します」と私が言ったばかりじゃないか。
そもそも第一部のほぼ半分はフィクションだろう、こんな調子では先が思いやられるぞ。

はっ、 すいません。では失礼して…
林ィ!この馬鹿者。戦争映画の見過ぎだ、歯ぁ食いしばれ!!

精神注入ッ!!

あいたっ!何すんですか艦長!!

馬鹿者は貴様だハンス。
それではホホイ大先生がフルメタ厨である事しか判らぬではないか

は、申し訳ありませんでした。
では艦長、90式戦車についてのツッコミをお願いします。

うむ、この本にもある通り90式戦車は情報の収集と共有の能力、
即ちC4Iの面で遅れがあるともっぱらの噂だ。
だが、「戦車の性能」とは偵察や通信ではない。無知な者はここであっさりダマされる。
参考までに言っておくと、90式は17年前に登場して以来殆ど進化していないにも関わらず、世界で三番目に強い戦車と言われている。
火力・装甲・機動力で世界レベルの性能を有するばかりではなく、
慣性誘導装置を組み込んだ火器管制システムにより、全速力で走行中に放った弾丸で初弾命中が期待出来る… 
って、ハンス三味線弾くんじゃない!

艦長、饒舌ですねぇ。

いいかげん「俺の話」をさせてくれ、ホホイ大先生は憲法が改正されて「自衛隊」が「日本国国防軍」になっても、徴兵制は復活しないと言っている、この点に異論は無い。だが…

だが?

気付かんか?
第一部の約半分を占める日本国国防軍のシュミレーションとやらでは大体の人は二年間軍人をやったらさっさと辞めて社会復帰するという事になっている。
志願するか否かは個人の自由意志に任されているという設定だから、そりゃ徴兵制ではないだろうが…

じらさないではっきり言って下さいよ。

徴兵制シリーズでも読めば一般人にも判ると思うんだが、そもそも徴兵制が廃れつつある理由ってのは、

1.徴兵をやると、将来有望なインテリ書生も、軍隊内で絶対問題を起こすに違いないちんぴらも十把一絡げに入隊して来るので、社会にとっても軍隊にとっても損失となる。

2.戦闘機やイージス艦に限らず、現代兵器の扱いには習熟を要するにも関わらず、次々に入隊しては二年かそこらで辞められてはマトモに使える兵隊が育たない。

3.そもそも、平時の軍人は穀潰しに他ならないのに、労働力であり納税者でもある若者をわざわざ軍人にしてメシを喰わせるというのは国にとって負担以外の何物でもない。

…とまあ、こんなところだろう。で、まず問題になるのは2だ。
想像してみろ、貴様の部下の半分が「アルバイトの軍人」だったら…

なんだか胃が痛くなりそうな話ですね。

いかにも、無能な味方は有能な敵より恐ろしい。
1と3についても、一見このシュミレーションでは問題にならないように見えるかも知れないが、生活保護を受けていた者、学力だけでは出世出来ない者が、「国防経験者」という資格を手に入れるためだけに二年間だけ入隊するという話になれば、

1.使えない奴が大挙して軍に押し寄せる

3.その使えない奴に二年もメシを喰わせ、就職や年金の面倒も見なくちゃならない

とまあ、軍隊から見ればこういう話になる。
…一体いくら国防予算が必要になるんだろうね。

なるほど、フィクションにしてもあまりにも不出来ですね。

ちなみに、現代兵器と「徴兵されたアルバイト軍人」の相性が悪い事については既に実例がある。
1966年10月26日の早朝、北ベトナム沖にてアメリカ軍の空母オリスカニーは艦載機の発進準備をしていた。
艦上では艦載機の兵装を取り替えるため、発光弾を取り外し、弾薬庫へ格納する作業をやっていた。
事件の発端となったのは二人の間抜けな水兵だ。
「慣れ」とは恐ろしいもので、こいつらは本来手渡しで運ぶべきものをポイと投げてはキャッチ、ポイと投げてはキャッチ。

まさか…

左様。ポイと投げて取り損なう。こないだ火災現場で野次馬がベランダから落とされた赤ん坊を取り損なったようにな。

艦長、そのネタは不謹慎です。

赤ん坊を落っことせば意識不明になるが、発光弾は信管が作動する。
プシュシューとか言いだすから、びっくりしたバイト君は、そいつを弾薬庫へ放り込んでバタン!
…本当は信管が作動してから火が出るまで大体20秒かかるから、海にでも投げ捨てれば良かったんだけどね。

バカだぁ、こいつら…

当然ながら、弾薬庫の中で誘爆が発生。スプリンクラーが作動するがあいにく発光弾はマグネシウムだ。水素が発生して火炎と一緒に格納甲板へ流れ込む。でもってそこら辺の可燃物に引火して大惨事。
火災は数時間後に鎮火し、オリスカニーは沈没こそ免れたものの、
結局航空機6機が損傷し、乗組員は44人も死んだ。

うちは潜水艦だから、そんな事案があったら全員死亡確定ですね。

最近も、演習場から帰る途中の国防ウーマンがファミレスに突っ込んだ話があった事からも判る通り、元来軍人とは社会勉強の片手間に勤まるような仕事ではない。
文字通り「制服を着た公務員」なのだからな。
つまるところ適性が無きゃいかん。
ゆえに、憲法が改正されてもそれがホホイ先生のシュミレーションのような事態を招くとはきわめて考えにくい。
だいたい、すぐ軍人を辞めるような奴に制服を着せるなんざ防衛予算の無駄になるだろうが。

なるほど、日本人の人件費は世界トップクラスですもんね。

さてと、来週は「超不都合な科学的真実」だったな。
小官にとっては2ちゃんのアクセス規制の方が不都合なんだが…

いいかげん、その話題から離れて下さい。

0 件のコメント: