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2014年3月31日月曜日

小保方論文ねつ造疑惑のねつ造疑惑

 あんまりボサっとしてると月が変わってしまうので、以前予告した小保方論文の内容よりそれを批判してる輩の方がよっぽど胡散臭い事言ってやがるぜという話をします。

なんかね、あれから時間が経てば経つほど論文自体の内容とは関係ない人格攻撃じみたゲスいネタばかり増えてくるんで、批判する側が何を言ってるのかという事をググるだけでも一苦労なのですが…
今回は任意に選んだこのブログで、不自然な点として触れられている批判内容について、ツッコミを入れたいと思います。

 ただし、誤解しないでいただきたいのですが、小官がコレを選んだのは問題のブログの主に何か含むところがあるからではなく、このブログは小保方論文の問題点として巷間で指摘された複数の事案についてある程度よく纏められているので参考資料として有力だと見做したが故に引き合いに出したまでです。
あくまでも、これらのネタ(の中でも特に一部の酷い科学音痴が露見してる件)に関して、ああいうレベルの低い批判をした事に対する責めは、問題のブログとは関係の無いどこぞの誰かさんが負うべきです。


 さて、ここで問題点を判り易くするために、少し喩え噺をしましょう。
以下の画像は小官が適当にネットから拾ってきたものです。
加工の準備のために画像のファイル形式を少々弄ったために、解像度とか色々と悲惨なことになってますが、これは某吉野家に並ぶ人の列です。
見ての通り、画のど真ん中で白いチノパンの兄ちゃんが前の人に遠慮して列の間隔を開けているために、繁盛してる割にはなんか寂しい感じを醸し出しています。

これでは少々見苦しいので、この隙間に適当な人物をコピペして客の入り具合を盛ってみましょう。
ただし、そのままの画像を張り付けても普通に見破られるので
"向きを変えて"張り付けてあげます。
どや、この違和感

みんな画像の左側にある入口に向かっている中で、一人だけスマホ持ったタンクトップの兄ちゃんが右側を向いて突っ立ってる事で、向きを変えてコピペだと気付かれないようにした筈が逆に違和感を醸し出して合成画像である事が判り易くなっています。

…そんな下手な事するくらいなら素直に
こうやって向きを変えずに張り付けた方がまだマシですよね。
これでもまだ画像の右端を見ればコピー元の兄ちゃんの存在に気付くレベルですが。
つまり、一般常識として画像をねつ造しようという場合、皆同じ方向を向いている筈のモノに向きを変えた画像を混ぜて張り付けても逆に違和感が増すだけなのです。


 と、いう事を踏まえて頂いた上でこちらの画像捏造疑惑について。
この画像はおそらく電気泳動にかけたDNAのバンドを一部切りとってきたモノだと思われます。
理系ではない方のためにかいつまんで説明致しますと、DNAの電気泳動とは要するに生物から取り出して培養した遺伝子を精製した寒天の中に染み込ませ、電圧をかけて移動させる操作の事です。

ご存じの通り、生物の遺伝物質であるDNAは細長い鎖状の分子です。
で、これが寒天の分子のナノサイズの立体的な網目をくぐり抜けて移動しようとする場合、短いDNAは比較的抵抗なく移動できるのに対して、長いDNAは頻繁に寒天の分子に引っかかるために中々移動できません。
この違いを利用してDNAを分子量ごとに分けるのが電気泳動。
…分析したい試料の隣りのコースからあらかじめ分子量の判っている合成したDNAを流してやれば、画像を比較することで資料に含まれているDNAが何百塩基対であるかという事を推定する事もできます。

 で、この泳動バンドというモノは皆同じ方向を向くモノなのか、って言うかそもそもこいつには前と後ろがあるのか?
…残念ながらDNAの電気泳動という操作を知っている人間にとっては
"両方ともイエス"が答えなのです。

本来的には、以下の画像のように上から下へと泳動させたDNAが塩基対ごとに綺麗な横棒になって分かれてくるのが理想的な状態です。

しかしながら実際の現場ではこうなったり
あるいはこんな具合で
ほとんどの場合はちょうど水中に垂らしたインクのように尾を引いて移動していく様子が観察されます。
…例によってこれらの画像もネットから拾ってきた実験機材のメーカーさんの画像だったり、学生実験で実際にDNAを泳動した画像ですが。

 さて、ここで上に尾を引いて下向きに移動していく泳動バンドの中に下へ尾を引く…明らかに下から上へと移動した形跡が見られる一群のバンドが混ざっていたら、一体どういう風に見えますか?

もう判りますね?
DNAの電気泳動という操作を少しでもやった事のある人間なら、論文の資料を画像を切り貼りしてでっち上げようという場合、いくら元の画像が不鮮明だからといって
"画像を切り貼りした不自然さを隠すために泳動バンドの上下を入れ替える"なんて間抜けな偽装を思いつくとは考えにくいのです。

そんな事するくらいなら、向きをそのまんまにして画像の明るさを変えて切り貼りするとか、研究室のパソコンの中に残っている以前の論文でボツにした写真とかを使った方がよっぱどバレにくいってもんです。

…と言うか、他の画像については実際に以前この研究者がやった別の論文の写真を断りなく内部流用した件が指摘されているんですから、もしも意図的な捏造なら泳動バンドの画像についてもいちいち加工せずに没ネタを発掘して来た方がはるかに簡単でバレにくかったのではないでしょうか?

 ゆえにこの件に関しては、何かの手違いで実際に過去の論文に使ったデータを内部流用した筈が、泳動バンドの方向が逆さになっていたというような間抜け過ぎるミスがあったというようなケースでも想定しない限り
「そんな馬鹿な言い掛かりを付ける人の頭の中身の方が明らかにおかしい」
これでFAになってしまうケースだと言えます。



 次にこちらの泳動バンドを切り貼りしたとされる件
 あらかじめ説明しておきますと、この画像はリンパ球からSTAP細胞を作製するのに成功した根拠として提示されたもので、右側のレーン4と5に流したSTAP細胞のDNAにリンパ球の特徴と万能細胞の特徴の両方が現れているというものです。
で、中央のレーン3のリンパ球の泳動バンドが他の映像から切り貼りされたものであるとの指摘を受けて、理研はES細胞を流したレーン1.2をレーン4.5と共に縦方向に伸ばして長さを合わせた上で、両者の間にレーン3を張り付けた事を認めたそうです。

当然の事ながら、このような論文の読者に誤解を与えるような加工はネイチャー誌の規約違反です。

ただ、問題になるのはコレが加工された画像だからといって、即座にSTAP細胞がねつ造であるという証拠には直結しないという点です。

というのも、小保方の研究グループはそもそもDNAの電気泳動装置を自由に使える立場にあるので、最初からありもしないSTAP細胞の証拠をねつ造しようと思えば、普通にレーン1.2にES細胞、レーン3にリンパ球、そしてレーン4と5にはSTAP細胞のモノだと称して両方を混ぜたDNAを入れて流してしまえば、わざわざ指摘されるような画像加工の跡を残さずとも、一枚のゲルの上に同じような泳動バンドを作り出して証拠をねつ造してしまえるのです。

 これに併せて、問題の画像が当初はSTAP細胞が体性幹細胞の誤認ではない証拠集めのために撮影されたという背景を考えると、本来は幹細胞とだけ比較してリンパ球由来の遺伝子を持っていることを示そうとした画像について、リンパ球の遺伝子との比較ができない事を指導教官や同僚から指摘されたために、リンパ球の泳動画像をあとから追加したと考える方が自然ではないでしょうか?

…当然の事ながら、ありもしないものを見せようと最初から偽物の画像を作ったのであれば、同じ事をもう一度やればいいだけの話で、こんなバイオ系なら学生にだって捏造できるレベルのトリック映像を作るためにいちいち画像を切り貼りするような二度手間を掛ける必然性は無いと考えられます。

従って、コレは以前から言われている通り、盛ったのは事実としても100%完全にウソだと決めつけるのはさすがに論理の飛躍だよねとしか言わざるを得ないネタです。



 で、めんどいんでコレで最後にしますがGFPが発現したとされる画像について、比較対象とされている何の操作も受けていない細胞の画像が画像処理ソフトで信号の強度を上げてやると、赤い細胞らしきものが見えるという話も指摘されています。
ニュートンの記事を読めば判りますが、このGFPというのは緑色の蛍光を発する蛋白質で、実験対象にしたマウスは細胞が多能性を発揮した場合、細胞自体がこのGFPを生産し始めるために紫外線を当てると緑色に光るように遺伝子操作が施されている実験用のマウスです。

要するに、この遺伝子操作を受けたマウスの細胞は普通の状態では光らず、万能細胞に変化した時だけ紫外線を受けて緑色に光るという性質を持っているわけです。

 という事は、どういう事か?
蛍光顕微鏡の画像で比較対象に"赤く光る細胞のようなもの"が写っていたからと言って、それが刺激を受けなかった細胞まで万能細胞に変化したという証拠にはなりません。
重ねて申し上げるようですが、GFPは"緑色に光る物質"なのですから。

この件に関して、批判者のサイドは右側のGFPが発現してる写真とは異なり、左側の対照群の写真には全体的に赤い光が写り込んでいる事から、対照群の写真には赤色のフィルターを使って緑の光を消す隠蔽工作が行われていると主張しているようですが…

そもそも蛍光顕微鏡というのは、通常の光源とブラックライトを切り替えることで観察対象の発する蛍光を観察するという機材です。
つまり、小保方サイドが不正な画像をねつ造するために左側の写真を真っ暗にしたいと考えれば、わざわざフィルターなぞ使わず、手っ取り早く通常光源もブラックライトも消した状態で写真を撮ってしまえばいいだけの話なのです。

 さらに突っ込んで申し上げましょう。
この件に関しては、問題のブログの筆者自身が(おそらく本人は良かれと思って)捏造疑惑の指摘者よりさらに明度とコントラストを増強した画像を掲載していますが、奇しくもこの画像にきわめて重要な判断材料が現れています。
注目して頂きたいのは、対照群の画像の背景に写り込んでいる赤い光に全体的に砂嵐のようなノイズが入り込んでいるという点です。
あらかじめ他の可能性を潰しておきますと、特徴的なタイル状のパターンが現れていない事から、これはかの有名なブロックノイズというやつではありません。
では、デジタル画像に極端な画像強化を施した結果として量子化ノイズが増幅されたのか?
しかし、同じ処理を施されている筈の右側の画像は
全体的に白飛びしてるものの、同様のノイズは現れていません。

従って、こいつの正体はショットノイズである可能性が極めて高いです。

詳しく説明すると量子力学や確率論の初歩に触れる必要があるのですが、要は携帯や旧式のデジカメ等で例えば夜景のような極端に暗い場所の写真を撮った場合にお目にかかる、画面がブツブツと荒れるアレです。

つまり、この種のノイズが発生しているという時点で、左下にある赤っぽい写真を撮った時には、CCDカメラ自体が光の存在は認識できても光の強度は正確に把握できないという極端に光量の少ない状況であったという証拠になりうるわけです。

他方、右側の画像にそれが現れていないという事は、操作を受けた細胞がこれとは対照的にショットノイズが入り込む余地もないほど大きな光量で光っているという事を暗示します。

 加えて申し上げますと、いくら十分な光量で光るとはいえ観察する対象は針の先より小さい細胞です。
そうでなくとも、紫外線で照らして可視光線で光っているモノを観察しようという時に、外部から太陽や蛍光灯の光が入り込むと困るので、一般的に蛍光顕微鏡は可能な限り観察の邪魔になるような可視光が存在しない場所で運用するのが望ましいとされます。

ただ、だからと言って本当に可視光が全くない部屋で実験をするわけにもいかないので、実際には
このような暗室と呼ばれる部屋で使用する事になります。

まあ、対象となる物質の種類によって何色の可視光が有害になるかという点は変わってくるのですが、幸いなことにGFPは"緑色の蛍光を発する物質"なので、この暗室で使用されているような写真現像用の薄暗い赤ライトであれば、仮に乱反射によってカメラの中に有害光線が迷い込んでも、GFPが発する緑色の光とは容易に区別できると考えられます。
…ここまで申し上げればもうお分かりですよね、問題の画像に写り込んでいる赤い光の正体が。


 無論、何度も申し上げている通り、小官は小保方論文の内容に"全く瑕疵が無い"とまでは言いません。
しかしながら、その論文の問題点として挙げられてる疑惑に以上のような、むしろ批判する側の素養のレベルを疑わさせずにはいられないケースが散見され、更には、結局論文の内容でガチンコ批判できるネタが枯渇したと見え、ゲスい人格攻撃に走り始めた近況を見ると、結局小官のような人間としては
「基礎的な知識も無い人間が正義の守護者を気取っても、自分の知的レベルの限界を露呈するだけですよ?」
としか、申し上げようがないわけです。

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