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2010年3月24日水曜日

八木・宇田アンテナ偉大なり

軍ヲタの間で半ば伝説のように語られつづけている話に八木・宇田アンテナと旧軍のレーダー開発に関するネタがあります。

…まあ、常識として知られている話なのかも知れませんが、1920年代に東北帝国大学の八木秀次氏と宇田新太郎氏が短波を細いビーム状に収束できる新型アンテナを開発し論文を発表したが、国内では殆ど注目されず、逆に欧米でレーダーの開発に応用されたと。

太平洋戦争初頭、日本軍は夜目に頼った闇討ち戦法を得意としたが、これと戦った米英軍は相手は八木アンテナを生んだエレクトロニクスの国だから当然レーダーを使って夜襲を掛けてきているものだと思い込んでいた。

…が、しばらくするとどうも日本軍にはマトモなレーダーが無いようだ。
って言うか自国が誇る科学者八木博士の事も知らないらしい。
レーダーの開発に多大な貢献をして戦場の常識というものを変えてしまったはずの博士が、正当な評価も受けずに質素な暮らしをしている。

…という事を知って欧米の研究者は驚いた。こんな感じのネタです

まあ、実際のところは実用に耐える精度のレーダーには短波より更に波長の短い超短波が必要で、そのためには八木アンテナよりパラボラアンテナが一般的だったりするんですが。
でも、超短波の発振に必要なマグネトロンの研究で先行しておきながら、みすみすレーダー開発で遅れを取った事なんかも考えると、こりゃ当時の軍人さんたちに先見の明が無かった事は決定的に明らかなんですが。

…つかみの部分でかなり横道に逸れてしまいましたが、今回紹介したいのはワイアードの”ナノ八木アンテナ”の記事です。

なんでも広島大学で100ナノメートル程度の八木アンテナを作ってこれにレーザーを当ててみたところ、レーザーは"電磁波としての性質"を示し、見事にアンテナの前方に集光されたとの事。
で、今回の発見は量子コンピュータ等への応用が期待されてるとの事。
(なんか、ナノテクで発見がある度に量子コンピュータへの応用
 と聞く気がするんですが、気のせいでしょう)

まあ、可視光がその波長に近いナノサイズの物体に対して電磁波としての性質を示す事自体はけっこう昔から知られていて、近接場光技術なんてのもあるわけで、そこまで驚く事でも無いとは思いますがね。

2 件のコメント:

yang さんのコメント...

初めて投稿致します。
いつも興味深く拝見しております。
浅学ながら、私見を記述させて頂きますと、
今回の八木アンテナの件などは、技術開発自体がその国のお家事情を強く示す一例かと。
もし、日本が英米並みの国力を持っていたならば、攻撃優先指向ゆえの”闇夜の提灯”などの認識で電探を軽んじることは無かったかと。
やはり、貧弱な国力ゆえの短期決戦ドクトリンでは、電探においては攻撃を阻害する要因のみ目に付き易く、当時を思えば戦訓が無いままでは、レーダーの存在を重視する風潮は生まれ難いと判断いたします。
つまり、決して技術動向の不明とは一概に言えないのでは、と思うのです。要は限られたリソースの優先順位の問題かと。
量子コンピュータについてですが、現状では、まだ基礎技術の検証レベルで、実用までどれくらいハードルがあるのかも見えない状態でしょう。
エンタグルメントがすぐにデコヒーレンス起し、エラー訂正もできない以上、量子論の実験以上の意味を持たないと思われます。
そんなレベルだから、新たな量子論関連のネタが出る度、量子コンピュータに繋げられてしまうのでしょう。SF好きとして楽しいですが。それより、一向に実用機の出る様子の無いフォトニクス系演算機の方が寂しいです。80年代に基本デバイスが登場しているのに・・・。
まあAIも早く、シンギュラりティを突破して超知性でも獲得して貰いたいものです。

yang さんのコメント...

先日の書込みの訂正をば。
エンタグルメントと記述しまして、申し訳ありません。EPRペアやGHZじゃありませんね。
量子重合せ=スーパーポジションが正しいですね。何をボケていたのやら。