このブログを検索

2007年4月6日金曜日

たのしい核物理学講座その3~中性子を制するものは核を制す!

前回は
核エネルギーってそもそも何よ?
って話をしました。
で、今回はその核エネルギーを引き出す方法についてやろうと思います。

原子核を構成している「核子」のパワー「核エネルギー」。
そいつを引っ張り出すには、早い話が「原子核をぶっ壊す」ことだというわけですが、原子核を直接ぶっ壊すには大きな障害があります。
それが「電磁力」具体的には、原子核に含まれている陽子がプラスの電荷を持っているので、原子核をぶっ壊すために何がしかの素粒子を叩き込んでやろうとすると、その電荷に邪魔されてしまうのです。
まあ、粒子加速器など使用すれば実験室レベルでやることは可能ですが、工業レベルでやろうとすると
http://www.keidanren.or.jp/mutsu/ITER.html
こんなブツが必要になったりするわけです。
もしかすると「原子核を壊してないじゃないか」と突っ込みたい人もいるかも知れませんが、「エネルギーの高い原子核をエネルギーの低い原子核に変換」することで余ったエネルギーを取り出すという原理は基本的にいっしょです。

で、超伝導磁石とかプラズマ制御だとか、んな超絶科学はっきり言ってやってられませんよね?
ところが、前世紀の初めに既に都合のいい存在が発見されていたのです。
「それ」は電荷を持たないので、原子核に簡単に接近することが可能です。
その上、核力の影響だけは受けるので、接近したあと、結構簡単に原子核に吸収されます。
それが今回の主役「中性子」なのです!
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E6%80%A7%E5%AD%90

そんで、中性子を吸収した原子というのは、陽子の数が増えたわけじゃありませんから、化学的な性質は変化しないままちょっとだけ重くなります。
ただし、原子核の中での核力のバランスはばっちり崩れていますから、たいていの場合放射能を帯びます。
http://spiral_inspiration.at.infoseek.co.jp/ri.html
ちなみに、放射性元素はその種類によって、エネルギーが違うので、成分の判らない「資料X」を一時的に原子炉の中に放り込んで、戻ってきた「資料X」から出てくる放射線のエネルギーを、半導体検出器とかで測る事によって、「資料X」に入っていた元素の構成比を割り出す「放射化分析」という方法があったりします。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/ja3/qa/qa1.html

で、「とくに重たい元素」のケースですと、仲間割れが起こりそうなところをなんとかバランスを保っていたという状況に、「外部からの中性子」というかく乱要因が混ざりこむことで、致命的な結果を引き起こすわけですね。
これが「核分裂」ですね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E5%AD%90%E6%A0%B8%E5%88%86%E8%A3%82

そして、重要なことには、核分裂が起こると新たに中性子が発生するという点でです。
有名なウラン235の場合、(ソースにもよりますが)平均すると一回の核分裂で大体2.4個の中性子が出ると言われています。
で、この中性子が全部次のウラン235を分裂させると仮定した場合、二回目の反応で中性子は5.8倍、三回目で14倍・・・ってな具合に「不幸の手紙」よろしく増加していくわけです。
これが「核分裂連鎖反応」です。
ちなみに原爆の場合、大体80回くらいで核物質が全部燃えると言われていますが、それに要する時間はなんと0.8マイクロ秒というきわめて短い時間だったりします。
http://www.ne.jp/asahi/hayashi/love/losalamos303.htm

ただ、中には「中性子を吸収しても分裂しないやつ」がいたり、「核物質の塊の外へ逃げていく中性子」(こいつが一番問題)があったりで、きちんと条件を整えてやらねばそうそう連鎖反応にはならないものです。

で、その問題をクリアーする一番の近道は「逃げていく中性子」を減らすことですが、そのためにはウランの塊をできるだけ大きくしてやればいい。
球の直径を二倍にすれば、容積が8倍になる一方、表面積は4倍にしかならないので、逃げる中性子はざっと半分になる。

そうして、「逃げてく中性子」と「核分裂で新しくできる中性子」がバランスする核物質の量を「臨界量」というわけです。
原爆を作るにせよ、原子炉を作るにせよ、核物質が臨界量以上無いと、連鎖反応は起こせないのです。

気の利いた小型原爆なんかでは、この臨界量を減らすために、核物質の周りを「中性子を反射する物質」で包むという工夫が為されていたりします。
最近は爆縮方式の改良などもあって、この臨界量はプルトだと(ソースによっては)1キログラム程度で済むそうです。
一方の原子炉では、「中性子を食べてしまう物質」でできた「制御棒」を炉心に出し入れすることによって、「ちょうど臨界量」という状況を維持します。

と、いうわけで、「核技術」とは「中性子を制御する技術」に他ならないのでした。

…おぉ、おぉぉぉ!
珍しくきちんと纏まった。(本当か?)

0 件のコメント: