なんでも、先週上海でリニアモーターカーに反対するデモがあったみたいですね。
まあ、前の世紀も中国の人達は気脈を断つからとの理由で鉄道敷設に反対したくらいなので、「何を今更」なんですが、リニアに反対する理由として「健康に有害な電磁波が云々」というのを聞いた時には、一人だけツボにはまって人目もはばからずに爆笑してしまいました。
なぜならば、今日はえせ科学編で「有害な電磁波」のコントをやる予定であったからです。
と、いうわけで、「超不都合な科学的真実」始めます!
しかし艦長、「電磁波は有害だ」というのはけっこう言われている事ですよね?
むろん、小官も「全く無害だ」なんて言うつもりは毛頭無い。
そもそも、電磁波と生体の関係については、波長と強度というものが重要な条件になるからな。
例えば、浸透力の強い放射線として有名なガンマ線も、ごくごく僅かであれば、免疫細胞を活性化するし、どういう根拠でか生体に有益と言われている赤外線も出力によっては相手を丸焼きにしてしまう。
だが、この本でケイ・ミズモリ氏が電磁波を有害としている根拠がはっきり言ってアレなんだ。
つまり、有害だった事例しか挙げていないというわけですか?
それもある。
だが、この本ははっきり言ってもっと悪質だ。
まず冒頭で
「そもそも電子レンジは、ナチス・ドイツがソビエト連邦との交戦に備え、多数の軍人に容易に食料を供給するために研究・開発されたものと言われている」とやっている。
ちょっと待って下さい。
そんなの初耳ですよ、一般的にはアメリカがレーダーの研究をしている時に電磁波を浴びたチョコが溶けちゃったのが始まりだって聞きますが?
うむ、小官は過去にこれと似たような論法に出会った事がある。
小官が地元の某大学に出入りしていた時期に、ちょうど大学自治会が住基ネットに反対していたんだが、その時に配られたパンフにナチスの時代から既に国民を管理しようという計画は始まっていたのだと、だから住基ネットには反対しなきゃいけないんだと書かれていた。
…ちなみにそのパンフに書かれていたナチスの住民把握計画というのはたしか、全国民のプロフィールを生年月日順に整理して本棚に詰め込み、その本棚を円筒形の建物の中に十二月生まれは北で六月生まれは南という具合に配置して生年月日はおろか星座までも一発で検索できるようにするというものだったと覚えている。
なるほど、してみるとこのケイ・ミズモリってジャーナリストも印象操作を目的としてナチスを電子レンジとリンクさせてると考えた方が良さそうですね。
いかにも。
だがこの章では、これに続いて1989年にミネソタ大のとあるグループがラジオで警告を発した事例が挙げられているな。
電子レンジで哺乳瓶を温めた場合、外側は冷たくても中のミルクは極めて熱く、やけどの恐れがあるのだと、またミルクそのものが変質している可能性もあるのだと。
…別に珍しい事を言っているわけではないと思うがね。
例えばマックのアップルパイを電子レンジで温めると、外はぶよぶよ中は黒こげという残念な事になるし、ミルクティーを作る時にお茶が先かミルクが先かで味わいが全然違ってくる。
初期の電子レンジ料理の本に載っている、内部から温まるから火の通り具合が判りにくいって話ですね。
まあ、最近のレンジは賢くなっているから、よっぽどの事をしないとそうそう残念な事にはならないそうですが。
その通り。
普通に読む限りでは、電磁波よりむしろ火の通し過ぎの方を警告する文言に読めるんだが、これに続いて危機感を煽るかのようにこう書いているな。
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危険性が指摘されているだけではない。実際に、深刻な問題が起こっているのだ。
1991年、アメリカのオクラホマ州で、ノーマ・レヴィットという女性が腰の手術で輸血を受け、死亡する事件があった。原因は、看護師が輸血用の血液を電子レンジで温めたことだった。輸血用血液は、事前に温められるのが通例だが、もちろん電子レンジが使用されることはない。電子レンジで温められた血液は、正常な血液には存在している重要な「何か」を失うか、有害な「何か」を発生するかして、彼女を死に至らしめたと考えられる。つまり電子レンジが単純にモノを温めるだけの働きをしているわけではないという事実を、この事件は露呈したのである。
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この文の中に既におかしなところがあるな。
「輸血用血液は、事前に温められるのが通例だが、もちろん電子レンジが使用されることはない。」つまり、本来は電子レンジで温めることにはなっていないものを電子レンジで温めて血管の中に入れたら、医療事故になったという話じゃないか。
目には見えなくても、赤血球が死んでたり、血漿の中のタンパクが凝固して変なコロイドになってたかも知れない。
それがなんだって、食品に電磁波を照射すると有害物質が発生すると言わんばかりの論調へ論理が飛躍するのか理解し難いね。
艦長ぉ、この章ってこういう話に終始するんですか?
いや、メインとなっているのはスイスのハンス・ハーツェルとかいう科学者の話のようだな。
ん?奇遇だな先任、お前さんと同じ名前じゃないか。
艦長、なにかと迷惑ですから、以後この人の事は「ハーツェル氏」と呼称することにしませんか?
提案を認める。
本章の中では、ハーツェル氏は電子レンジによって食品がどのように変化し、どのように人体に影響を与えるかを研究した第一人者だと書かれているな。
ハーツェル氏が到達した結論というのは、電子レンジで加熱・調理された食品の栄養分は変質し、ヒトの血液にも変化をもたらす。その変化は決して健康的な変化ではなく、人体の機能を変化させ得る変化であった。
…というものだそうだ。
べつにそんな不思議な事ではないと思いますよ。
そりゃ、電子レンジで温めるようになっている保存食品とか、いかにも不健康な感じがしますけど、せいぜい缶詰や冷凍食品なんかとどっこいどっこいだし、カップラーメンなんかと比べるとマシな方じゃないですか?
いかにも、いかにも。
本章には旧ソ連時代にロシヤが既に電子レンジ調理の有害性を認識して禁止していたという話もあるのだが、ここいらへんの問題については日常生活に密着する事でもあり、不安を抱く人が多いのか電脳世界でも議論になっているな。
小官も、まともそうなところをちょっと見てきたが、やはり明らかに有害と言い切ってしまえるほどのものでは無いようだ。
これが有害だと言い切ってしまってるようなサイトだと、電子レンジでコップ一杯の水を温め、暗い場所に置くと、チェレンコフ光を確認できる、これは電子レンジのマイクロ波で水の酸素原子が破壊されて放射性核種が出来た結果だなんて言ってるらしい。
また、とあるサイトだと、小学生の実験で鍋に入れ、ガスコンロで温めた後にさました水と電子レンジで温めた後にさました水を植物に与えたところ、電子レンジの水を与えた方は一週間後に枯れてしまったという事を言っていたが、後にこのサイトに掲載されていた画像からこの話自体捏造であった事がバレている。
不安がっている人に電波を垂れ流したり、捏造データを提示したり…
酷いものだ。
ちなみに、太陽からもマイクロ波は降り注いでいるのだが、これについて本章の中でハーツェル氏はこう言っているな。
「太陽からのマイクロ波は、振動する直流電流の原理に基づいている。そのような光線は有機物に摩擦熱を起こさない。」
振動する直流電流…ですか?
多分脈流の事だろう。
だとしたら、電子レンジのマグネトロンが出す高周波も安全な筈なんだがな。
マグネトロンの正体は日本語で磁電管という真空管で、陰極と陽極があり、磁界の中を走った電子が陽極に吸収されて、ハーツェル氏式に言えば猛烈に振動する直流電流になって出てくるという仕組みだ。
一方、太陽から出るマイクロ波はプラズマ体が熱によって振動することで発生するもので、こいつは敢えて言うなら、交流だな。
それなのに、こんな事を言う時点でハーツェル氏が電磁波の事なんかなーんも知らんという事はほぼ確定でね。
まあ…こんなのを真に受けてる時点で、ケイ・ミズモリってジャーナリストの「真実を見抜く能力」も眉唾もんって事だ。
香具師確定ですね、こんな本売ってお金を稼ぐなんて。
しかし、不公平なものです。
こんないかさま商売がお金になる一方で、真面目に働いている人達は底辺近い生活を強いられているのですから。
そう不満を吐くな。
人を呪わば穴二つと言うだろう、陰謀論者の行く末も大方そういったところだと小官は思うね。
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