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2007年8月11日土曜日

核祭り2007〜NHKスペシャル「核くらい知る!」

昨日ドラマで「はだしのゲン」がやっていたのですが、こいつはどうも酷い時代考証ですね。

まあ、原作者の中沢啓治氏にしてからが書く漫画書く漫画なぜか好戦的な平和主義者が主人公で、問題の作品も盆踊りのシーンで被爆者団体からの抗議を受けたというエピソードがあったりします。

しかしながら、つかみの小咄で
「そこはグラマンじゃなくてマスタング!」とか
「劇中で人口40万都市とか言いながらなんで学校が変に緑豊かな環境にあるんだ?」
「うぃ?終戦間際に入隊して海軍航空隊ぃ?!」
「あんたら、よう資料も掘り下げんとそんなとりあえずカネかけましたってな仕事しててよく平和ボケした現代に伝えたいメッセージとか言えるよなぁ?」
…といった野暮な話を延々とやる気も無いので、とっとと本題に入りませう。

今回は先週やってたNHKスペシャル「核クライシス」シリーズに対する感想と考察が主となります。
 先ず、前編の前半「地上爆発」ですが、番組では広島型と同威力の核兵器が現代の広島市の路上で爆発したというシチュエーションを想定していました。
まあ、これはこれで同威力の核兵器が上空と地上で爆発した場合どれくらいの違いが出るのかというシュミレーションとしてはいいのですが、テロリストが都市の中に核爆弾を持ち込むというシナリオでは、全く無いわけではないにせよ、ちょっと不正確かなと思います。
 敵拠点へ破壊活動を仕掛ける事を目的として使用される小型核兵器は「ADM」と称しまして、冷戦のかなり初期に開発が進んでおります。
大型のクーラーボックスくらいの重量約70キログラムのやつで威力は1キロトン。
更に小型化されたものはADMではありませんが、有名な「デービークロケット」で、威力は20トン。
基本的に広島型の数十分の一の破壊力と考えて頂ければ間違いはありません。
 ただし、核兵器は核兵器。爆発したときの汚染はちょっと想像したくないくらいのヤバさがあります。
恐ろしい事に所謂ADMとして有名な「スーツケース爆弾」などは、旧ソ連崩壊のどさくさで百基近くが行方不明となっており、既にテロリストの手に渡っちゃってるんじゃないかと言われております。
あ、ちなみにこいつの威力は0.3キロトン(TNT300トン相当)って言われてます。

 そして後半の「高高度爆発によるEMP攻撃」ですが、これはまあまあ正確です。
しかしながら、これに対する防御手段が「ファラデーの鳥籠方式」以外述べられていないのはちょっと…
現在では既に「サージ電流をカットする素子」とか「ホトカブラー」といったものがありますので、いざという時にダウンしては困るところにこういった対策を施しておく事で、精密な電子回路もかなりの確率で保護できると思います。
 そもそも高高度爆発自体冷戦期に色々とやられているので、アメリカさんもこういった事に対する対処法は着々と研究しておるのではないでしょうか。
となれば日本も…となる筈なのですが、なんかね、徒に「核の恐怖」を煽っているような印象を受けました。

 最後にIAEAとイランの攻防を描いた「核クライシス」の後編ですが、こいつはちょっとイラン脅威論が過ぎるのではないでしょうか?
少なくとも北朝鮮の方が問題かと。
 …というのは小官が所謂「熱湯浴」だからではなく、核についてある程度の知識を持っているから言う事なのですが、少なくとも小官が「核武装を目論む独裁者」であるのならば、ウラン235なぞ願い下げです。
天然ウランの中に0.7%しか入っていない上に、化学的性質が全く同じなので比重の差を利用して分離するしか無いブツなぞ…ねぇ。
一方プルトは使用済み核燃料を再処理して手に入れる事が出来るし、ウランより少ない量で原爆が作れます。
ただし、核燃料があんまり長い時間中性子を浴びるとプルトはプルトでも到底原爆には使えそうも無い質の悪い同位体(主としてプルト240)が出来てくるので、原爆を作る為には核燃料をちょびっと炙っては再処理工場へ送るという方法をとる必要があるでしょう。
…となれば、核エネルギー開発を装って核兵器をこさえる為には、
「これは日本もやってるプルサーマルですよ」とか言いながら旧ソ連型の原子炉と再処理工場の組み合わせを稼働するという方法が一番簡単だと思います。
旧ソ連型の原子炉は、図体こそでかい黒鉛炉ですが、基本的に天然ウランをそのまま燃やせるので濃縮工場が不要で、燃料棒が軽水炉で言うところの圧力容器の役割も果たしているので、任意の時期に燃料棒を引っこ抜いて再処理工場へ送る事が可能です。
軽水炉だと、炉心自体が一つのタンクの中に密閉されちゃうからこうはいかない。
仮に、本気で核開発を企んでいるにも関わらずウラン235に固執するとすれば、それはIAEAにマークされる黒鉛炉を使わずに済ませたいか、原子炉を稼働させる為に必要な技術や人材が根本的に不足しているので天然の分裂性核種をどうにかして濃縮したいかのどちらかでしょう。

…すると、いちばんありそうな話としてはイラクはやはり独自の技術で軽水炉をこさえたいと考えているのではないでしょうか。
だけどそうなると、アメリカは自分たちの原子炉を買って貰えなくなる上に、ひょっとすると石油の値段まで釣り上げられてしまうかもしれない。
そこで、IAEAに斬り込み隊長をやらせて…といいう推測の元にこの後編をもう一度見返してみると、やはりこれは軍事目的だろうが平和利用だろうがイラクに独自の核技術を保有させたくないというアメリカの意思が働いているように思われます。

公共放送なんだからさ、もうちょっと、もうちょっとね、勉強して番組作りをして欲しいものです。

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