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2009年8月21日金曜日

平和宇宙戦艦その2

先任、始めるぞ。

はっ!
今回は「平和宇宙戦艦が世界を変える」の第二章
”日本だけが持つ新型宇宙船の画期的技術”です。

まず"ロケットの打ち上げリスクと構造上の欠陥"の節だ。
ここでまず気になるのは冒頭のコレだな
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 現在のロケットは、地上から大量の化学推進剤を燃焼させて、物体を地球重力に逆らって押し上げているわけだが、この押し上げている時間が長ければ長いほど高性能なロケットと言える。そして、このパワーを「比推力」と呼び、その単位を秒で表している。化学燃料を使ったロケットは、燃料を燃やし尽くすまでの時間は大体四〇〇秒から四五〇秒(六~七分)であるが、この時間のあいだにマッハ8以上の速度をあげながら大気圏を突破し、宇宙空間へと飛び出している。
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…理系の素養が無い人にしてはよくやった方かも知れんが、ロケットの話をする以上、比推力の定義については触れておかなければならないな。
比推力とは1キログラムの燃料を燃焼させて1キログラムの推進力を何秒間発生させる事ができるかということだ。

という事は、日本のLE-7Aエンジンを例にすると、推力が109トンで比推力が429秒ですから、109トンの燃料を消費するのに429秒かかるわけですね。
つまり一秒間に254キログラムの燃料を消費する勘定になる。

余談だが、スペースシャトルのSSMEやエネルギヤのRD-0120エンヂンは比推力的には大体似たような数字だが、推力はおよそ二倍だ。
そして、日本が開発中のH-2BロケットにはこのLE-7Aを二本束ねて使用するという事だから…判るよね?

技本が
「うちの作ったエンジンは推力は小さいが自重に対する推力は大きい」
って言ってるのと似てますね…

話を戻そう。
この節の内容は従来型のロケットには、いまだ未解決の大きな欠陥が二つあるというものだ。
第一にロケット本体が一体構造ではなく、数メートル毎に区切られた輪切状のものにゴムパッキンを噛ませて結合してあるので、強度的にここが弱点になるというもの。
第二に、打ち上げる物体が重くなればなるほど大きなロケットが必要になるため、ロケット本体に大きな負荷が掛かるというもの。
…前者は固体ロケット固有の問題で、後者は物理法則の必然って気もするがな。

…艦長、この人もっと大きなポカやらかしてますよ。
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 実際、打ち上げ数十秒後に大爆発を起こす事故が二〇〇三年二月にコロンビア号を襲い、七人が犠牲となったが、これは断熱材が剥がれてタンクやエンジンを傷つけたことから発生した。断熱材の剥がれから発生する事故を避けるために、ロケットの頭頂部に人工衛星や有人カプセルを載せる場合は、当然ながら物体の大きさは制限される。
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打ち上げのときに爆発したのはチャレンジャーで、コロンビアは再突入のときに空中分解したんでしたよね?

黙っておけ、貴様には武人の情けというものが無いのか?
 さてと、次の節”ジェット機で宇宙へ行ったスペースシップ2”だが、ここの内容は要約するとジェットエンジンの推力と主翼が作り出す揚力を利用すれば容易に高度15キロ辺りまで到達できる。
そして在来型ロケットの場合、ここで機体に最も大きな負荷が掛かり、燃料消費も最大となるので、このあたりはジェット機として飛行し、そこから先はロケットエンジンで宇宙へ飛び出すような機体を製作すれば最も効率的だという話だな。
そしてその事を示す実例として"スペースシップ2"が取り上げられている。

アレってたしか軌道には乗らない弾道飛行ですよね?
極端な言い方をしちゃえば"ナンチャッテ宇宙旅行"…
それを本物の衛星打ち上げロケットと同列に扱うってどうなんですか?

たしかに、例のスペースシップについてはその通り。
ただしジェット機で対流圏を突破し、そこからロケットで衛星を打ち上げようという構想は既に実現している。
アメリカのペガサスロケットがそれだ。
こいつはロケットのくせに巡航ミサイルみたいな翼が生えていて、空中発射によって低軌道へ衛星を投入する事が可能だ。
こいつならジェットエンヂンを乗せれば多分使い捨て型ながらもスペースプレーンになるかもしれない。
スタートレックの出演者の遺骨を宇宙に散灰した事もあったっけ。
ただし、ロケット本体の重量が推進剤込みでおよそ20トン。
こいつが低軌道へ投入する事のできる貨物の重量がまあ400キログラム。
更に打ち上げ時には20トンのこいつをでかいジェット輸送機に装着してえっちらおっちら成層圏まで上昇してゆかねばならん。
ふつーに昔のICBMを魔改造して衛星打ち上げに使ってもあんまり変わらんような気もするな。
早い話が21世紀に入って宇宙旅行ビジネスが活発化しているからといって、そこまで革新的な技術が開発されているわけではないという事だ。

”ロケットに代わる新たな推進技術とは”の節ではエアブリージングエンジンというものを取り上げているようです。
ただし、その前の部分でこんな事が書かれています。
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 この一四〇〇トンもの巨大重量の物体を、翼を使わずに地上から100メートル上昇させるだけで燃料の50%近くを消費し、一五キロ上空に達するまでには燃料の70%近くが消費されてしまうから、化学燃料を使う方式は極めて効率が悪いことが理解できよう。
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上から100メートルと言ったら、発射台離れてすぐですよね?
ターボポンプ回す液体ロケットエンジンでそんな短時間に燃料が半分近くも無くなるなんて、常識的に考えにくいんですが。

まあそれは置いといて、ここはエアブリージングエンヂンの話をしてみよう。
エアブリージングエンヂンとは、要するに大気を吸入する推進器のことで、現在一般的に使用されているジェットエンヂンなんかもこいつの仲間だ。
この種の推進器は大気を使用するため、一般的にロケットエンヂンと比較して燃費に優れている。
例えば液体水素と液体酸素を燃やす場合の理想的な混合比は重量で言うとおおむね水素1に対して酸素8とされる。
つまり、ロケットは推進剤の重量の大部分が酸素なわけだがエアブリージングならこいつを地球の大気中から調達できる。
昔一時期流行ったコンコルドみたいな形のスペースプレーンはこいつを応用してエンヂンの作動限界速度までは水平飛行で横方向の速度を稼ぎ、作動限界から先はロケットで第一宇宙速度まで達すれば最小限の推進剤で宇宙へ飛び出せるという構想なのだ。

…そんな便利なものが実用化していないということは、何か問題があったんですよね、艦長。
やっぱり開発資金が足りなかったとか?

HOTOLなんかはそうなんだろうが、理論的により大きな問題となっているのがエアブリージングエンヂンの作動限界速度だ。
エアブリージングで作動限界速度が最も大きいのは、本節でも紹介されている”スクラムジェットエンヂン”なんだが、今のところこいつはマッハ10前後が作動限界速度のようだ。
ところが第一宇宙速度はマッハ数に直すとまあ25程度にはなる。
一般的に運動エネルギーは速度の自乗に比例するから、これでは推進剤の四分の一も節約できない勘定になってしまう。
早い話が、さっきのペガサスみたいに単なる翼のついたロケットで地上から飛び立った方が余計なギミックを搭載してない分マシ…いや、大気中を水平飛行すると空気抵抗を受けて推進剤が無駄になるので在来型みたいに垂直発射した方がいいという話になる。

ダメじゃん。

で、”日本だけが持つ画期的な洋上フロート技術”の節だが、ここは事もあろうにこのスペースプレーンを飛行艇として作るべきだ、日本には二式大艇の伝統を受け継いだUS-2飛行艇があるから可能だ…という内容だ。

飛行艇設計の難点って、水上を滑走するのに都合の良い形と大気中を飛行するのに都合の良い形は必然的に違うから主として空力性能が犠牲になるという事ですよね?
それで、二式大艇の場合は機体の横幅を極端に切り詰める事でクリアーしたんでしたよね。

しかもUS-2はターボプロップの亜音速機だ。
現実的に言って、空力的な要求がより厳しくなる超音速機を飛行艇として作れるような技術は日本ですら持っていないと言って構わないだろう。

その次は”カプセル型宇宙船の落とし穴は三つ”の節ですね。
その三つの落とし穴というのは「安全性」「天候」「居住性」だそうです。

まず、「安全性」に関してだが、ここでは打ち上げ時に何か不具合が起こってもこれを中断する事ができないという事を言っている。
打ち上げ時には帰還時とは異なり燃料等を消費してないから船体が重く、高度も低いのでパラシュートもきちんと機能するか疑問だと言っているのだが、この種の宇宙船は打ち上げ時に問題が発生した場合は、カプセルについている脱出用ロケットで離脱する事になっている。
従って、あまり心配する必要はない。
次に「天候」についてだが、従来型宇宙船は悪天候のためにしばしば打ち上げや帰還が延長されて地上や宇宙で待機する飛行士に大きな負担が掛かると言っている。
…さすがにコレは贅沢だろう。
「居住性」に関しても、やっぱりペイロードが少ないが故の制限についてウダウダ言って、結果的に30人乗りのスペースプレーン水上機の方が優れていると言うんだな。

そりゃまあ、現実の宇宙船より「ぼくのかんがえたうちゅうせん」の方が性能が高いのは当然ですよね。
だって妄想ですもん。

こらこら、それを言っちゃいかんだろ。
で、最後の”防衛産業と中小企業のパワーが必要な宇宙海洋開発”だが、ここは早い話が軍需・民生両方に使えるハイテク技術をどんどん開発すべきだという事で、細かいところには色々と問題や事実誤認があるが、大筋ではまあ首肯できる内容なので突っ込まない事にする。
…いい加減疲れたしな。

艦長、
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 このHTVは、宇宙空間に達するとロケットから切り離され、自らのエンジンと自動操縦でISSに到達しミッションを遂行している。日本の防衛産業は宇宙船建造技術を完全にマスターしているのである。貨物輸送機器は、他には欧州宇宙機関の「ATV」と、ロシアの「プログレス」があるが、いずれもHTVより小型のため、米国が国際宇宙ステーションに送る水や食料、実験機器などの必要資材を送ることができず、二〇一八年までは日本のHTVを購入せざるを得なくなっている。HTVの価格は一機一四〇億円である。
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このHTVの件については何も仰らないんですか?

ググればいいと思うよ。
このHTVには前にもぬか喜びさせられたしな。

投げやりだ…

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