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2007年6月2日土曜日

電波解析レポート~「まもなく宇宙人が到着します」第一章

と、ゆうわけで始めていこうと思いますが、
著者は占い師。で、いきなり「宇宙人は実在する」とやっちゃってますから、
良くも悪くも常識的な方はこういった書物に書かれている内容を一顧だにしないと思います。

にもかかわらず小官がこんな事業に手を出すのは、この本が日本人デムパ系の中でも至って典型的な主張をしており、また、書店で入手できた。
つまり、入手しやすくしかも理想的なサンプルであったからなのです。

ではでは、今回は第一章「宇宙人・地球外文明が存在する真実」を扱いましょう。
文章量も少なく、この調子でやってゆけば八本の記事が書ける・・・
これくらいのメリットが無ければ1200円も投資しませんって。
冗談はさておき、とりあえずこの強烈なデムパの嵐の中から一応話の通じそうな部分を抜粋して突っ込んでみます。
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今世紀文明の一番悪いところは、目に見えないものしか信じようとしないことです。
 現代人は目に見えないものについて、「そんなもん、信じられるか」といいます。
 私たちは目に見えないものについて、じつはこれこれがあるんです、あれがあるんですっていわれても、まず拒否反応を示しますね。
 でも、目に見えないからこそ大事なものは、いくらでもありますよね。

 もう、そこが間違いなんですよ。
 データなんて信じなくていいんです。
 遠赤外線は、目に見えない温かい光線のことですね。冬、日陰は寒く、太陽に当たると温かいのは遠赤外線があるからです。
 たとえば、
「目に見えない遠赤外線があるんです。とても体にいいんですよ」
 といわれても、これだけ病気が治ったとか、実験・裏づけデータを見ないと誰も信じない。
 波長20から25ミクロン以上といわれる遠赤外線がないと、人間や生物は育ちません。だから遠赤外線は育成光線ともいわれるんですね。
 もっとも近ごろでは目に見えないマイナスイオンが体にいいというのは、すでに常識化しつつありますけど。
 最近は、目に見えない精神世界に関心をもつ人たちが、徐々にふえていますよね。
 それでもまだ人間は、UFOとか、宇宙人というと、うさん臭い顔をする人が多いんですね。

 たとえば、秘密結社のイルミナティ(地球の影の支配者といわれる少数の人達)など、世の中を支配したいと思う人たちは、何も見ざる、いわざる、聞かざるにさせちゃえば、人類全体のコントロールは簡単なんです。
 影響力のあるメディアを使って「右に行きなさい」といいますね。「そうか。右に行くといいことあるんだな」と思わせてしまえば、みんな一斉に右に行くわけですよ。
 そうやって人類をコントロールしてきたから、今急に「じつは、あなたは自由なんです」といわれても、どっちに行っていいかわかんないでしょ。
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 きちんと校正をかけてないのか、しょっぱなから変な誤植がありますが、これは無視して本題に入りましょう。
科学というより科学の方法論の話になりますが、
一般的に「科学者は目に見えるものしか信じない」と言われていますが、これはあんまり正確な表現ではありません。
科学の方法論とは基本的に数学と同じで、ある命題が真か偽かを判定し、次にその命題を下敷きに新しい問題に取り組むというものです。
したがって基本的に白黒はっきりした問題しか扱えず、研究者はここに足場を置いた上でグレーの領域を開拓してゆく… というのがルネサンス以降科学者がやってきたことであります。
つまり、「目に見えるものしか信じない」のではなく、
「目に見えないものについて論じることはできない」のです。
宇宙人や幽霊の類が「非科学ではなく未科学」というのはこの辺の事情を弁えた上での表現なわけです。

次いで、サイエンティフィックなところに突っ込みます。揚げ足を取るようで悪いのですが、
「遠赤外線が体にいい」というのはかなり大雑把で乱暴な言い方だと思います。
そもそも遠赤外線に限らず赤外線は基本的に熱作用を持っています。
そして生物は基本的に暖めてやれば、成長や疾病・障害の治癒は勿論、老化までもが加速されるのは常識であります。
さて、ここで敢えて「遠赤外線が体にいい」と言うためには、遠赤外線を照射したグループと、遠赤外線以外の赤外線で同等の熱量を与えたグループ、そして、熱線は一切照射せずにヒーターで同等の熱量を与えたグループとで比較実験を行い、「暖めさえすれば何でもいいのか、それとも遠赤外線でなくてはならない理由があるのか」といったあたりを厳密に調査しないといけないと思います。
http://uni-site.net/yoshi/water/ikuseikosen.html
おまけになんか育成光線の波長の記述に間違いがあるし。

そしてこれがマイナスイオンともなると、これはもうえらいことになります。
というのは、「そもそもマイナスイオンって何よ?」というもっとも重要な問題が実は解決されてなかったりするからなのです。

おまけに電気屋さんが空気清浄機を売りたいがためにこの問題に干渉して更に状況をややこしくしてしまっています。
少なくとも、一般的に売られている「マイナスイオン発生器」の基本的な構造は、針状の電極に高電圧発生回路等で作り出したマイナスの電荷をチャージして放電させる… というものが殆どなのですが、
空気に高電圧をかければ静電気による凝集効果で空気中の細かな埃を取り除く作用が発生することが知られており、発電所のばい煙処理や半導体工場のクリーンルームなんかに応用されています。

つまり、空気をきれいにした結果健康にプラスに作用するのか、或いはなんかマイナスに帯電した分子が飛んでって直接健康を作り出すのかといったことすら判らないのです。
だけど、電気屋さんは空気清浄機が売れればそれでいいので、この辺の問題をまじめに検証してはくれません。

で、先にも言いましたとおり、こういった未解明でデータの出揃っていない問題はあくまでも「非科学ではなくて未科学」なのです。
そして、もっとも重要な点なのですが、こういった未解明の命題に挑むにあたって、科学者は何らかの先入観を抱いて結論を下すことがあってはならないのです。
ここで「目に見えないものこそ大事だからデータなんか信じない」とやるのはまさにその先入観なわけなのです。
 遠赤外線にせよマイナスイオンにせよ体にいいか悪いかは少なくとも現時点で科学的にはっきりした裏付けがあるわけではない… なのに「いいに違いない」と判断してしまうのは軽率でしょうと。
実はこの論理の飛躍にこそ「オカルトの人」の典型的な特徴が現れるのです。

最後にイルミナティについてですが、これは陰謀論大好きな人達の最近のトレンドみたいです。
で、この本の著者は「見ざる言わざる聞かざるにしてしまえば人類全体のコントロールは簡単」と書いてますが、これもまた現状認識としてちょっとアレです。
民衆を「三サル状態」へと誘導するためには、じつは十分に行き届いた政治でもって彼らに安穏な生活を保障してやる必要があります。そうでないと日本人以外の民族の場合暴動が発生する。
事実「最良の政治とは賢帝による専制政治」なんて言葉があったりします。
で、こういった理想的な条件を整えても必ず「右へ行け」と言われて左へ行ったりその場に寝転んでいびきをかき始めたりする「アノマリー」ってやつが現れる… これをどこかの国みたいに力で直接押さえつけても歩留まりが100%になることはまずありません。
…ということは、実際に世界を支配するためには、大勢の人々に「自分は自由だ」と思わせておきつつ、教育や報道、宣伝といった情報源へ長期的に浸透して「全体として一つの方向へ走るように工作する」といったあたりが現実的みたいです。
が、そうやって大勢の人達の思想を支配しても、実は彼らは支配する側の言うことを聞いてくれるとは限りません。
なぜならば人間とは「自分の見たいものを見る生き物」だからです。
つまり、皇帝になって民衆を支配したとしても、民衆の聞きたくないことを口に出したら、その時点で失脚確定なわけです。

…以上の事実を踏まえて、イルミナティかそれに類する組織の実像を「ある」という前提のもとに推定してみると、世界の報道機関の地下に大規模なネットワークを保有していると思われ、また、民衆に安穏な生活と自分たちは自由だということを意識させておくために、下部組織としていくつかの慈善団体や政治活動団体の類を保有している可能性もあります。
しかし、影の支配者とはいえ社会組織に寄生して生活しており、なおかつ民衆の支持を失えばその支配体制が揺らぐことになりますので、表立って度派手なことをやらかしたり、自ら民主主義を破壊するようなアクションはとりづらいと考えられます。
ある意味では彼らこそ民衆に支配されているとも考えられるでしょう。
つまり、そういった集団が存在したところで、ある意味でネオコンや経団連より怖い団体にはなり得てもUFOビリーバーほどエキセントリックな存在になりうる材料があるとは考えにくいわけです。

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