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2009年9月23日水曜日

平和宇宙戦艦その7

 民主が政権与党となった事で、色々と困った事になるんじゃないかという話がある一方で、連立政権の中でも左派の社民党が民主を困らせるという珍事が起こっていたようです。
あんな事言う人が居るくらいなら、いっそのこと民主から切られて向こう数年は野党をやってて欲しいもんですが。

さて、今回はいよいよ「平和宇宙戦艦が世界を変える」の最終章
”日本に数千億兆ドルの外貨をもたらす”
となります。
言うまでも無く「数千億兆ドル」という文言に突っ込んではいけません。

そこで豆知識サイトへのリンクを貼り付けるなんて、えげつない艦長ですね。

ハンス、お前さんとはやはりきちんと話し合った方がいいようだな。
そんな事よりさっさと始めて貰おうか。

はい、本章の内容は
・超音速旅客機の実現を早める
・宇宙旅行は日本の巨大宇宙船で
・軍事紛争がなくなると日本は超経済大国となる
・地球規模の旅行ブームとなる携帯型自動翻訳機
・子供達に夢を与える効果は絶大
・技術窃盗を防いだ上で「平和宇宙戦艦」の建造を
となっております。

というわけで、まずは最初の”超音速旅客機の実現を早める”だな。
「実現を早める」というか、超音速旅客機は既にツポレフ144コンコルドなどが実用化されてたが、環境問題の関係でボツになったという経緯がある。
しかし、この問題に関して著者はこういう事を言っているな。
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 世界にジェット旅客機が登場したのは一九五〇年代であるが、それからほぼ六〇年間というもの、スピードはマッハ1ほどで推移してきた。英仏が開発したコンコルドはマッハ2で運行したが、ビジネス界は受け入れなかった。ジャンボジェット機の速度よりも少し早いというだけで、搭乗者数が一〇〇人と限定されていた上に、極めて高い運賃であったため、記念に乗る人はいても、ビジネスマンが利用できる大量輸送機関としては相応しくなかったからである。
 日本が開発を進めているSSTの速度はマッハ2であるが、極超音速ジェットエンジンやスクラムジェットエンジンが実用化すれば、さらにスピードはアップされ、将来はマッハ10が標準速度となる可能性もある。
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一般にジャンボジェットと言われるボーイング747型は最新型でも巡航速度はマッハ0.855とされている。
これに対して、コンコルドの巡航速度はマッハ2.04。
当然のことながら「少し早いというだけ」なんて文言で片付けることが出来ないほどの優位がある。少なくとも「速度的には」だが。
実際にはビジネス用途での旅客機の利用はそんな事より運賃の安さを重視する傾向がある。
ジャンボジェットや後発のエアバスA380なんかは一機に500人近く詰め込む事で運賃を安くしているし、ボーイングの次世代機B787は500人も乗客が居ないような路線でも従来機種より燃費や航続距離を向上させる事で、受注競争に勝とうという発想で開発されている。
…ここを超音速で飛んでしまうと、当然のことながら燃費は劣悪となる。
超音速で飛行するため、遷音速機や亜音速機には使用されない技術を多用せねばならないから、機体価格や維持管理費用も割高となる。
これが更に、極超音速ジェットエンジンやスクラムジェットエンジンの採用でマッハ10前後で飛ぶようになれば、機体は激しい空力加熱に曝されるので、結果的に構造材には耐熱合金を多用し、燃料も特別なものを湯水のように消費するハメになる。
この問題に関しては、SR-71という好例があるな。
にもかかわらず、本節の中では平和宇宙戦艦の開発が進む事で、超音速旅客機にフロートを付け、水上発進させる事で滑走路が不要となり、空港周辺の騒音問題も無くなるとか言っている。

艦長はスルーしたみたいなので、自分はこの文言を取り上げましょう。
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 米国では、新SST計画をニュー・オリエント・エクスプレス計画として発表し、米国版SSTを「NASP(National Space Plane)」と呼んでいた。ただ、米国のNASAはNASPを開発するために推進してきたX-33計画を中止してしまったため、現時点では超音速旅客機の計画は、日本の他には英国のHOTOL計画とドイツのゼンガー計画があるのみである。
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まず、「National Space Plane」ナショナルスペースプレーンという名称からして超音速機ではなくスペースプレーンの開発を狙った計画であるという事。
そして、X-33はスペースシャトルの後継機を開発する構想で開発されていた実験機であるという事。
HOTOLゼンガーもやっぱり超音速機ではなくスペースプレーンの開発計画であり、しかもX-33より早い段階で中止になっている事。
あまつさえ、ゼンガーは冷戦以前の話ですよ。
一体何をソースにすればこんな事を書けるんでしょう?

…どうだかな、この人の事だからソースが正しくてもほぼ確実に誤読してるんじゃあないのかね。
そして次節”宇宙旅行は日本の巨大宇宙船で”は、平和宇宙戦艦を民間向けに改修したスペースプレーンを開発すれば、三十人くらいの乗客を乗せて宇宙旅行が可能になる、そして日本がこの分野で先んじてデファクトスタンダードを握ってしまえば日本経済が大いに潤うと言っている。

「いや、本来はその平和利用の方が先だろ」と突っ込みたくなるのはさておき、ここで気になるのはこの文言ですね。
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 日本の巨大宇宙船は、月面や火星面に直接着陸ができる上に一週間ほどの滞在も可能であり、さらに木星などへの惑星間旅行も実現することができるだけに、「宇宙海洋開発省」も新たな商業宇宙旅行を制定する必要がある。
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月や火星の表面って、岩と砂ばかりのデコボコした地形でしたよね。
滑走路でも作らない限り飛行艇やスペースプレーンで着陸するのは難しいんじゃないですか?
それに火星行きともなれば、第二宇宙速度まで加速してホーマン軌道に乗せて260日という話ですから一ヶ月程度の宇宙滞在を想定した宇宙船では明らかに能力不足だと思いますけど。

さっきからボケと突込みが逆になっているような気もするが、まあいい。
続く”軍事紛争がなくなると日本は超経済大国となる”だが、ここの内容はまあ平和宇宙戦艦の恐怖統治によって完全平和の時代がもたらされれば、世界各国はそれまで軍事費につぎ込んできた資本をまるごと社会資本の充実に廻すようになるから、土建大国である日本に注文が殺到してウハウハだとそういう事だ。
小官としては、171ページに
「リニアモーターカーから発進する平和宇宙戦艦」
として描かれている明らかにゼンガーをパクッたとしか思えないスケッチの方が気になったもんだが。

というか、防衛費がまるごと民生に廻ったところでそんなに大量の資本が生まれるとは考えにくいのですが。
対GDP比で日本が1%弱、アメリカですら4%でその他の国はまあ2%といったところだと記憶しています。

どちらにせよ、
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 ともあれ、米国発の経済恐慌によって落ち込む日本経済を立ち直らせるために、政治家は景気刺激対策として、数十兆円を充当しようとするが、それだけの予算があるならば「プロジェクトX」に投資する方がはるかに経済効果が期待できるのである。
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こんな事言ってる時点でブン屋さん同様、まず結論ありきで話を組み立ててるのが明らかだわな。

次は”地球規模の旅行ブームとなる携帯型自動翻訳機”ですね。
この節には、平和宇宙戦艦の話は一切出てこないです。
平和宇宙戦艦構想のプレゼンをするという本書の内容上、なんだってわざわざこんな節を挟んだのか理解に苦しむところですが。

というか、やっぱり内容がなあ…
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 だが、この翻訳機ができれば、英語を必修科目として高校や大学が設置する必要がなくなり、その分の時間を国語や数学、あるいは社会や理科などの充実に充てることができる。もちろん、受験科目から英語が外されるのは言うまでもない。
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これだもの。
とてもじゃないが、現在の自動翻訳の技術を過大評価しているとしか考えられない。
ちなみに小官は昔、英語の講義を受けたときに、時間節約の名目で課題のプリントをスキャナでパソコンに読ませて自動翻訳をかけるというチートを行使したが、その精度たるや「直訳そのもの」。
事実、辞書を引く手間が省けた程度でしかなかった。
まあ、グーグルで海外サイトを開くと、英語だろうがロシヤ語だろうが翻訳されたページを見ることはできるから、そのへん参考にすると大まかなところは判るかと思う。

そういえば最近も機内放送で妙な事案が発生してましたよね。
続く”子供達に夢を与える効果は絶大”の節では、平和宇宙戦艦を実現してその成果を博物館に展示すれば若者たちの理科離れを食い止め、科学や数学を学ぶ意欲を与えることになる。
その方がゆとり教育や反日教育よりマシだという事を言っています。

その点は正論っちゃ正論なんだが、まとめの部分でやっぱり
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 米国はキリスト教精神に基づいた民主的社会の実現を目指すであろうが、他の一神教国家が不信感を持つ欠陥もある。理由は、キリストが唱える人間の平等や自由は「キリストが言う神を信じる人の間で」のみ有効だからである。
 だが、日本の場合は、いかなる宗教も受け入れる自然崇拝の信仰心と、武士道精神に基づいた「儀、誠、勇気、恥、思いやり、謙譲」の精神で国際社会と友好を目指すことになるため、一神教の世界も日本のリーダーシップを素直に受け入れる事ができよう。
 しか平和宇宙戦艦は、日本のみならず世界をも平和かつ安定した生活を実現し、人類本来の平和に貢献しつつ日本経済を世界一に押し上げるものである。
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…なーんて事を言っちゃっているな。
仏も拝めばクリスマスも祝う、ある意味無神論的な部分すらある多神教の国が宇宙から地上を軍事的に威圧しつつ、世界中の国にゼネコンを送り込んで資本を巻き上げるとなれば、何所の国も「素直に受け入れる」どころの問題でない事は火を見るより明らかだと思うんだが、物事を一つの方向からしか捉えることのできない人というのは恐ろしいものだ。

そして最終節”技術窃盗を防いだ上で「平和宇宙戦艦」の建造を”の内容は他国、特に中国による技術窃盗には官民挙げて防衛体制を取るべきだと。
これは好き嫌いの問題ではなく危機管理の問題であり、反日意識と孫子の兵法で育った中国人研究者や技術者を重要な技術や情報部門の責任者にするというようなことは絶対にしてはならないというものです。

まあ、かの国が技術窃盗をしているのは事実で特に隣国でなおかつ多数のハイテク技術を擁している日本がガードを固める必要があるのは事実だ。
しかし
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 中国人は決して頭は悪くないが、持てる頭脳を悪の方面に全力を出す民族である。その証拠に、現在の中国製品の九割ほどは、全て日本を始めとする欧米先進国から窃盗してきた技術や情報を徹底的に活用している。中国大陸には十三億人もいながら、ノーベル賞を一人も取っていないことを見てもこのことは分かる。
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ここまで言っちゃったんじゃ、「筆者は中国人が嫌いなわけではない」と言うことは出来ないだろう。
小官が聞き及んでいるところによると、中国人留学生や技術者による技術窃盗というのは、留学の費用を中国政府が負担し、その引き換えに彼らに対して中国政府がこれこれの技術を盗んで来いと指示するという話だ。
「中国人」は悪くないが、「中国政府」に対しては用心し過ぎるという事はないと言うような話ならまだ分かるんだが。

とにもかくにも、問題は日本人が全体的にガードが甘い事なんですよね。
お友達になら企業秘密を教えても構わないなんて、世界標準では非常識もいいとこなんですよ。
重要な秘密に関しては、相手がたとえ親友や配偶者であっても
「それはそれ、これはこれ。」
と言えなかったり、居酒屋でふつーに口に出しちゃったりというのは非常に危険な行為なんですが。
…ちなみにこれは日本国内で売られている「孫子の兵法」をビジネスマン向けに解説したハウツー本の受け売りですけどね。
こういった最低限の自衛策も取れない人がうじゃうじゃいる現状で、お上が裁判員を導入するようじゃハイテク技術なんて、遅かれ早かれ身ぐるみ剥がれてしまうだろうと思いますけど。

それじゃあ、最後の最後に”おわりに”というのがあるんで、ここは丸々引用してみるとしよう。
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 思い起こせば二〇世紀の初頭(一九〇五年)、日本は日露戦争で未曾有の大勝利を収めたが、この時は「日英同盟」が機能した。二一世紀は「日米同盟」によって世界から全ての戦争・紛争をなくす平和宇宙戦艦を建造し、世界平和の実現に寄与するべきではなかろうか。
 幸い、日本は米国とともに平和宇宙戦艦建造技術を最も多く持っている国である。それゆえ、日本国民と米国民の両方を説得し「平和宇宙戦艦」を日米共同で開発するメリットとデメリットを冷静に検討し、一刻も早い決断が必要である。
 そして政治家を決心させるには、全て日本国民のプラグマティズム(現実主義)に基づく平和実現思考にかかっている。一国繁栄主義や空想的理想主義では、世界の諸問題は解決しないのである。
 日本歴史上、未曾有の大敗北を喫した大東亜戦争は、戦後の日本人の意識を一八〇度変えるほどのショックを与えた。戦後六四年間が経過する中で、日本人が大切にしてきた「勇気、恥、誠、謙譲、敬老」などの精神を、大東亜戦争で国家のために戦った人々とともに失ってしまった。
 かつてアニメーション映画で「宇宙戦艦ヤマト」が大人気を博し、主題歌が歌われたが、第二次世界大戦末期、沖縄へ片道燃料で出撃し撃沈された「戦艦大和」が、「平和宇宙戦艦・大和」として蘇るならば、あの歌は太平洋とアジア大陸各地で亡くなった英霊に対して、真のレクイエム(鎮魂歌)になるであろう。
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…この人やっぱり松本零士作品の読みすぎなんじゃあないかね。
ちなみに「宇宙戦艦ヤマト」は「アルプスの少女ハイジ」との視聴率競争の結果、一年の予定が半年で打ち切りになったりしている。
これで「現実主義に基づく平和実現思考」だもの。

その手段が軌道上からのレーザー攻撃とか、英霊に対する鎮魂歌どころか冒涜もいいとこですよね。

ハンス、それは事実だがそこまで言ってはいけない。

了解。

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