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2009年9月2日水曜日

平和宇宙戦艦その4

 今回の選挙で予想通り民主が第一党となりましたが、勝ちすぎという気もしないではありませんね。
自民と民主の勢力がそっくり入れ替わる形になった事から、今まで自民に入れていた無党派層が、空気に流されてどっと民主に投票したっぽいと愚考する次第です。
本音を言えば、もっとこー色々な野党が乱立してそこに議論の場が形成されると良かったと思うんですけど、それはさすがに贅沢というものでしょうか。

さて、皆さん今回はいよいよ「平和宇宙戦艦が世界を変える」の第四章
”日本が建造する巨大宇宙船とは”つまり「ぼくの考えたうちゅうせん」の章です
ここは内容的に色々アレな部分があるので最初に章全体の構成を紹介した上で内容について考察したいと思います。
では先任

はっ、第四章の内容は次のようになっています。
・巨大宇宙船の構造はこうなる 
・平和宇宙戦艦の装備と飛行士は
・平和宇宙戦艦の値段は五〇〇〇億円
・大量破壊兵器とMDの泣き所
・中華帝国実現の夢を放棄させる
というわけで、最初は平和宇宙戦艦の構造についての話になります。

最初の節では平和宇宙戦艦の性能諸元が紹介されているな。
全長60メートル、全幅36メートル、全高12メートル、
空虚重量50トン、全備重量170トンとの事だ。
…航空宇宙工学の知識も無い人が一体何を根拠にこの数値を導き出したのかという点については置いておくとして、基本的にはまず洋上を船舶として航行し、離水時には主翼と尾翼から一対ずつのフロートを降ろして水上を滑走し、ジェットエンヂンの推力で上昇。
その後スクラムジェットと固体ロケットで宇宙空間へ飛び出すという事だ。

その固体ロケットですけど、本文中にはこんな記述があります。
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固体燃料ロケットに関しては、二〇〇八年に再度利用が決定したM5(GX)ロケットを小型化して使用する。
 このM5ロケットは、固体燃料ロケットとしては究極の進化を遂げたもので、この技術を使わない手はない。そしてこれらエンジンの燃料も船内と尾翼に内蔵できる構造とする。
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GXロケットって液体燃料だったと思いますけど。

小官がそういう細かい問題より気になったのはこの宇宙戦艦の運用に関する思想だな。
地上からのレーザー若しくはミサイル攻撃に対抗するため、この宇宙戦艦には特殊金属の鏡を装甲として施し、地上からの攻撃にはビームを照射してこれを壊滅させるから、もはや「宇宙船」ではなく「平和のための宇宙戦艦」と呼んだほうが相応しくなるのだそうだ。
こりゃやっぱりデススターと呼んだほうが正しいんじゃないのかなあ…

というか、自由電子レーザーってX線も出せるから金属鏡ごときでは防御できないような気がしますが。
設置場所と発電能力の関係上、軌道上の宇宙船より地上のレーザー砲台の方が出力の大きな物を配備できるでしょうしね。

その電力だが、こいつが宇宙空間で活動する際には超小型原子炉と補助動力として太陽電池を使ってレーザー砲等のエネルギーに充てるらしい。
だが、この人の構想で一番の問題は燃料だな。
全備重量170トンのうち、燃料は30~50トンと見積もっている。
いくらエアブリージングエンヂンを採用して推進剤を節約するとしても、周回軌道に乗るのにこれでは明らかに少なすぎる。
というか、どうせ原子炉積むなら原子力ロケットを推進器にするべきだろう。
…世論の反発で潰れる事は必至だが。

次は”平和宇宙戦艦の装備と飛行士は”ですね。
なんでも、平和宇宙戦艦の装備は自由電子レーザー砲と炭酸ガスレーザー砲が各一門で、小型レーザー砲が二門。
加えて宇宙戦闘機を二機搭載すると言っています。
しかもこの宇宙戦闘機は母艦へ戻らずに地球へ直帰する事も想定してやっぱりフロートを付け水上機にするんだそうです。

ふつーに宇宙空間にレーザー砲搭載した要塞を浮かべておいて、地上との間をスペースプレーンなりカプセル型宇宙機なりで連絡した方がまだ実現性が高いと思うがな。
生活用品については、基本的に国際宇宙ステーションで使うのと似たようなもんなんで取り立てて言うほどのことは無い。
空虚重量50トンの乗り物に消耗品を35トンも搭載するなら乗員か活動期間のどっちかを削れよとも思うんだが。
で、乗組員は当然自衛隊員、船のネーミングは大和だそうな。

続く節”平和宇宙戦艦一隻の値段は五〇〇〇億円”では
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 とはいっても、米国が一九七〇年代から現在まで四〇年以上にわたって宇宙開発と軍事開発に費やした費用は百数兆円に上っており、この間、世界中に宇宙中継基地や各種人工衛星を開発するなど、平和宇宙戦艦の運用に関する装置を整えてきている。ということは、日米が共同で宇宙戦艦の建造を進める場合には、平和宇宙戦艦本体と新型エンジンを開発するだけでよいことになる。
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といった事を根拠に開発費用が15兆円、一隻の価格が三千~五千億円と一隻五兆円の原子力空母より安くなりますよと言っていますね。

じつはこの試算にはダマシがある。
ここの部分だ。
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 スペースシャトル一機の価格は二一六億円(一八億ドル)で、開発費の約一〇分の一のコストであるが、日本単独で開発した場合、一五億円の一〇分の一の一・五兆円とはならない。なぜなら、既に開発された技術と材料を使えるので、一隻当たり五〇〇〇億円で建造できる。
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何かの新技術の開発費用が15兆円と言ったら、普通は既に開発された技術と材料に上乗せして15兆必要になるという話なのだが、ここではそれがまるまる無かった事になっている。
事実、本書の106頁右下の開発費用を纏めた表では米国に関して照準器と各種衛星の開発費用の部分がゼロとなっているが、これは開発済みだから追加投資が要らないという意味に他ならない。
うーん、ズルいな。

そして”大量破壊兵器とMDの泣き所”の節ですね。
ここの要点は核弾頭、弾道ミサイル、迎撃ミサイルには
・運搬手段
・弾頭の飛行速度
・ミサイルの頭数
という問題点があり、レーザー砲はこれらに勝るという事のようです。

たしかに、次世代のMDでは地上配備型のレーザー砲が実用化できないか検討されているようだな。
ただし、
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 また仮にアフガニスタンで治安活動に従事する米軍部隊などに対して、テロ組織や武装集団が対戦車ロケット砲を発射しようと照準した時点で、平和宇宙戦艦は宇宙からこれを探知し、直ちにロケット砲の砲身にビームを照射するので、砲身は熱のために曲がって発射ができなくなる。しかも砲身を抱えた人間を殺傷しない利点を持っているのである。
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こういう事書くのはどうだろうね。
テロリストの抱えたロケット砲に、熱で砲身が曲がるほどのレーザーを照射したら普通はロケット砲が暴発してテロリストの人は確実にお亡くなりになると思うんだが。

最後は”中華帝国実現の夢を放棄させる”の節ですね。
ここの内容は末尾のこの部分に集約されていると思います。
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 中国が数億人民の生活向上のための社会インフラを日本などに任せて、宇宙開発に精を出すのは「宇宙を制する者は世界を制す」というテーゼを追っているからで、最終的には中国王朝の皇帝がアジア一帯を支配したように、世界の中華帝国を目指していることは明らかである。
 さらに、中華帝国の実現を目指す中国にとって、米国や日本を軍事的に牽制するために北朝鮮を利用しようとする戦略も練っているはずである。前述したように、既に北朝鮮は中距離弾道ミサイルと核兵器を確実に掌中にせいているが、中国は北朝鮮経済の七割以上を握っているから、中国の外交戦略の一翼を担わせるべく手を打っているふしがある。
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…昔米国や旧ソ連がやっていたのと同じ宇宙開発を中国がやったからと言ってこの叩き方は一体何なんでしょう。
そりゃまあ「わが国は発展途上国です」とか言って、本来なら自国でやるべきインフラ整備を他国に丸投げするのはどうかと思いますけど。

それもあるんだが、この場合やっぱり大きな問題になっているのは航空宇宙分野で日本があまりにも無欲に過ぎた事なんじゃないかと小官は思うがな。
かの国は日本と同等の経済規模にもかかわらず、月探査独自の宇宙ステーションなど野心的な計画を打ち出している。
かたや日本は低軌道へ10トンのペイロードを送れるロケットを保有しながら未だにカプセル型有人宇宙船の一つも飛ばさない。
ふじ構想が計画段階でボツになった事を考えると、これは結局意思の問題だと思うんだが。
自国があまりにも不甲斐無いのを中国のせいにするのはイカンだろう。

そこなんですよね、平和宇宙戦艦だろうがもっと実現性が高そうな他のタイプの宇宙船だろうが、日本はなんか消極的なんですよね。
まあ、役人ってのは失敗を恐れるものですから官僚国家じゃこうなってしまうのは致し方の無いところなんでしょうけど。

ところがどっこい、次回は米国が平和宇宙戦艦の開発を渋っているという話をする事になる。

いやいや艦長、どのみち平和宇宙戦艦みたいな構想じゃ普通に電波扱いだと思いますよ。

それは言わない約束だぞ!

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