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2007年2月10日土曜日

ラプタン来県記念「レーザー喰らって宇宙へ逝こう」

ってなわけで、リクエスト通り「レーザー推進」についてのお話です。
早速本題に入りたいところですが、その前に
「そもそもペイロードを軌道に投入するとはどういうことか」(つまりレーザー推進の目指すところ)
そして「在来型ロケットのどこが問題なのか」(何故レーザー推進が求められているのか)
という点をきちんと述べておきましょう。
前提条件を設定せず、目的も無しに「レーザー推進萌へ~」じゃ説得力のカケラもありませんからね。

まず、ペイロードを軌道へ投入することについてですが、それについては
http://www2.hamajima.co.jp/~tenjin/labo/otinai.htm
このような資料が存在しております。数式だらけで頭が割れそうな気がしますが、要するに「空気が殆ど無い高度100キロメートル以上の場所でだいたいマッハ25で水平飛行すれば自由落下が地球の丸みでキャンセルされてお星様になれますよ」と書いてあるわけです。
それを実行するとはどういうことか?
つまりペイロードに高度100キロメートル分の位置エネルギー+マッハ25の速度エネルギーをぶちこんでやるということです。
で、はっきり言って位置エネルギーについてはまったく問題ありません。
http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20040622301.html
この通り、「民間人の作った改造ジェット機」で十分に達成可能です。
問題は速度エネルギーです。速度エネルギーは質量に速度の自乗をかけた値に比例します。
例えばおにいさんの大好きなラプタンを「速度ゼロ」から「マッハ1」に加速するまで100ガロンの燃料が必要だと仮定すると、「速度ゼロ」から「マッハ2」まで加速するためには400ガロンの燃料が必要になる…
つまり「マッハ1」から「マッハ2」へ加速するために300ガロンの燃料が必要になって、結局速度の増加に従ってスウェーデンリレーのように必要な燃料が増えていくわけです。
「弾道ミサイルをゲキツイするとデブリが散らばって危険が危ない」と言ってる人
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/kaneko/news/20070208dde012070032000c.html
があっちこっちから「高校へ戻って物理を履修しなおして来い」と激励されているのにはこの辺の事情があるわけです。
http://obiekt.seesaa.net/article/33309373.html
(もうちょっとガマンして聞いててね、はじめて見る人のためにやってるんだから。)

次に在来型ロケットの抱えている問題点についてですが、それは「化学燃料はエネルギー密度が小さすぎる」この一点に集中します。
平たく言うと、「燃料-エネルギー=無駄な質量」
より具体的には「理想的な化学燃料を燃やしても排気速度は脱出速度より遥かに遅い」
それゆえに前世紀の半ばまで、人工衛星という着想は「理論的に可能。技術的に不可能」なデムパであるというのが一般の見方でありました。
で、それを「デムパじゃない!ちゃんと理論的な裏づけがある」と言い続けて生涯を棒に振ったのが
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%B3%E3%83%BBE%E3%83%BB%E3%83%84%E3%82%A3%E3%82%AA%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%95%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC
この人だったりするわけです。

あー!何ですか。その目は!
いいですか?「もしも彼の後継者をナチが援助しなかったら」北朝鮮が日本を恫喝するのにいまごろ列車砲を使ってたかも知れないんですよ。
教祖の彼だって、テスラ博士と同程度の評価を得られたかすら怪しい。
実際「弐号報復兵器」ってのは当初列車砲の延長線上にある兵器体系として運用されてたんです。
まあ、いずれ実用化されたであろうテクノロジーではあるわけですが、マンハッタン計画があくまでも実験室の中の理論に過ぎなかった原爆を具象化したように、「それが必要とされる状況(つまり戦争)が発生したことで」宇宙ロケットの妄想は「現実的なテクノロジー」に進化したんです。少なくともその過程が数十年は早まったと言っていいでしょう。

で、「宇宙旅行に関しては」化学燃料があまり品質の良いエネルギー源とは言えないという問題点を克服するために、彼が提唱したことが「燃料の品質が悪いならそれを十分補うくらいの量を用意して勝負する」「ロケットを多段式にしていらない質量はどんどん捨てる」という理論だったわけです。
当然それは、「発射の度に大量の燃料を搭載したロケットを使い捨てにする」というペナルティーを背負うことになりました。

そこで、化学ロケットを代替しうる存在として、古典的なところではあまりにも有名な
http://www.tenmou.net/forum/atlas/orbit/
これとか、種なんかでもお馴染みのマスドライバーなんかが考えられたわけです。
まあ、はっきし言ってデムパですがね。

で、より現実に近そうな回答として「いわゆる宇宙往復機」が考えられたわけですが、当然在来型の化学ロケットを使用しているため、目覚しい結果は見られなかった上に「機体に掛かる負荷が思いのほか大きく、使い捨てのほうがむしろ安上がりだと判った」ので、SSTOの開発計画にも暗雲が立ち込めて参りました。
そして、遂に「スクラムジェットはマッハ10強以上ではどうもまともに動作しないっぽい」ということが判ってきました。
そうなるとはっきし言って「意味ねーじゃん」です。どういうことかというと、化学ロケットのエンジンは重量比率にしてだいたい液体酸素8:液体水素1の割合で混合・燃焼させているので、スクラムジェットがマッハ25まで使えればその酸素をまるまる空気中から調達できるから推進剤の重量は九割弱削減できるはずだったんです。
それがたかだかマッハ10で使えなくなると、ラプタンのスウェーデンリレーの話を元に概算した場合、削減できる液体酸素の量はせいぜい全体の16%ってことになります。これじゃわざわざ空気を吸い込むために大気のあるところを飛ぶ意味がありません。

さて、そうなると結局「エネルギー密度の低い化学燃料を使用する限りに於いては」在来型ロケットが最良の回答ということが立証されたわけです。
この、「化学燃料を使用する限り」という条件が付くことに注意しておいて下さい。

そう、「化学燃料を使用せずに済めば」SSTOだってあながち妄想でもないのです。
で、SF作家たちは即座に「核エネルギー」と回答いたしました。ガンダムなんかに出てくる宇宙船はみなこれを前提としております。
しかし、核エネルギーはそうそうお手軽なものではありません。まあ、「キーウィ」なんかの例もありますが、あんなものが落っこちてきたらと思うと、反対運動が起こることは必至ですよね。

たいへんお待たせいたしました
そこで「レーザー推進」の登場です。
早い話が「エネルギー源がパワーのわりに重たすぎて機内に搭載できないのなら、よそで作ったエネルギーをじゃんじゃん送ってもらえばいい」という発想です。
先に言及された「ライトクラフト」というのは、推進剤をも外部から調達してしまおうという野心的なプロジェクトなわけですが、別にエアブリージング方式にこだわらないのならば、
http://www.ifsa.jp/kiji-rayzersuisin0410.htm
日本でも既にこんな研究をなさっている方がいます。
さすがに発振装置を機内に組み込み、推進剤まで空気中から採取するというのはあまりにも無茶と思いますが、この方式だと、密度の大きい「水」を推進剤として使用するため、同じエネルギーのレーザーを照射しても「ライトクラフト」の実験結果と比較しておよそ1000倍の推力が得られると判っています。
しかも「水」は比熱も気化熱もめちゃめちゃ大きいので、液化水素などよりはるかに大量の熱を持ち去ることができます。
つまり、機体を冷却するために必要な量が少なくて済む。
そこで、これを例えば「ライトクラフト」に組み込むと、推進剤を搭載するために機体の重量が10倍になっても、照射するレーザーのパワーは100分の一で済みますよね?
まあ、本家の「ライトクラフト」の場合、「十分なスピードに加速して」機体前面で発生した衝撃波の上にレーザーの焦点を結ぶことで、「ある種のラムジェットエンジン」として動作させ、熱効率を確保することを狙って設計されているようにも思われます。

で、レーザーのパワーがあれだから、さすがに現段階では人を乗せて軌道上へ投入するのは難しいでしょう。
しかし、先に挙げた方式などと併用して本気で数年間研究すれば、COILレーザーなんかを使ってCANSATくらいの物体を打ち上げるのはあながち不可能とは言えないと思います。
まじめにやってる人たちの書いた資料はこちら
http://www.oitda.or.jp/main/hw/hw9911-j.html

あと、オブイェクトのコメント欄で頂いた追加の懐疑論に対してもきちんと答えておきましょうね。
===============================
>水のことかい。どの道、水じゃ冷却材として不適。なんで、再突入体の為にアブレーション物質を研究したのやら…

>冷却材として適当ならば、最初から使われとるわい。

なぜ、再突入体の断熱に「液体」である水なりその他の冷媒なりを使用せずに、あえて「固体」であるアブレーターを使用したのか?
それは一言で言うならば、「液体は流れる」からです。
再突入体は部位によって熱負荷の掛かり具合が大きく異なるので、その冷却には別個に無数の配管を張り巡らせる必要があり、そんなことをするくらいなら、「蒸発しやすい固体」を貼り付けておいたほうが構造が単純で軽量化にもなると考えたからです。
当然、「エンジンノズルを燃焼ガスの高温から守る」というような用途とは根本的に条件が違うわけです。

あとは… テクノロジーの話じゃないから放っときましょう。
それでは的確なツッコミや「こんなのもありまっせ」ってな情報を待ってます。

1 件のコメント:

ハインフェッツ さんのコメント...

 更新が遅れてまことに申し訳ありませんでした。
なんかね、ここのサーバーがネットカフェのパソコンと仲悪いのか、ログオンの度に
「パスワードが違う」言われて
結局ログオンするためにメールアドレス送ってパスワード更新する羽目になるんですよ。

あ… ああーーー!
投稿に<論文>って付け加えるの忘れたー!