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2007年3月8日木曜日

ステルスの話その2

今までは伝聞に過ぎなかったのですが、ラプタンの航法システムのバグとはやはり
「日付変更線問題」だったみたいです。
http://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read2?f=200703081555

さて、昨日庵居仁さんにコメントを頂いて、
(オブイェクトがらみ以外ではお客さん第一号ですよ。これからはきちんと読者を意識して文章を書かねば!)

「あと、設計上の問題点はSEMと同根なのかなとボンヤリ思っていたのですが、主には空力との整合を取ることが難しいからなのでしょうか?」

との事でしたので、この辺の事情についてまたしても定性的で大雑把な話にはなるんですが、
(そもそも難解な数式を駆使できるだけのスキルが筆者には無い
追加で説明致したいと思います。

 まず、前回の記事で小官が漫然と言ってたことについてですが、資料をもっかいひっくり返してみたところ、同様の内容をよりスマートに説明したページがありましたので、クダクダ言わずにリンクを貼り付けときます。
http://homepage1.nifty.com/sm/main/senior/word/s/stealth.html

で、「ステルス設計の問題点は主として空力との整合を取ることが難しいからなのか?」という点についてですが、この資料をちょっと引用することにいたします。
http://www.f5.dion.ne.jp/~mirage/hypams07/b2.html
この資料の「■[ノースロップ社 B-2戦略重爆撃機 開発過程]」
のくだりの部分にこんなことが書かれています
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ロッキード社のF-117ナイトホークは、当時高性能なコンピューターが無かった為膨大な計算を必要とする「物理工学的解析理論」の三角形の面の数を減らす設計手法が取られて、平面を組み合わせた機体デザインとなっている。このステルス技術は、レーダー波を照射を受けた方向に反射させない手法だが、平面構成の機体デザインは空力特性を犠牲にする最大の欠点があった。ノースロップ社が採用したコンピューター支援設計による「連続した湾曲」は、平面構成のステルス技術をさらに発展させたもので、第二世代ステルス技術と呼ばれている。CAD/CAMによって設計された滑らかな曲線によるデザインは、空力特性を犠牲にせずステルス特性を最大限に引き出せる事がTACIT BLUE(タシットブルー)でも実証されている。
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よーするに「スパコンの性能が上がったおかげでB2は空力との整合がとても良くなりましたよ」てな事が書かれているわけです。
で、「ヨタカ」の設計に使われた「エコー1プログラム」が
「精神」(B2のこと)では「CAD/CAM」に入れ替わったということで、けっこう大勢の人が 「より洗練された強力なアルゴリズムのおかげで曲面を取り入れることが可能となり、空力との整合を取ることが容易となった」 と読み違えちゃってるようなところがあります。
まあ、あのカクカクしたスタイルと、逆にある意味なまめかしさすら感じさせる曲面を見比べたら、そう思ってしまうのも無理はないのですが。

しかしくれぐれも注意してほしいのですが、大事な事はこの資料の中にもきちんと明記されています
「ノースロップ社が採用したコンピューター支援設計による「連続した湾曲」は、平面構成のステルス技術をさらに発展させたもので、第二世代ステルス技術と呼ばれている。」
と。

つまり、この二つの「ステルス設計プログラム」にはまったく異なる理論が使用されているわけではなく、あくまでも「後者は前者の発展形」なわけです。
では、コンピュータの性能で何が違ってくるのか?
シュミレーションか何かの物理研究を目的としてコンピュータを触ったり、あと、3DCGなんかをやったことのある方なら、たぶんピンと来るかと思います。

こっからは大分に憶測を含んだ内容とはなりますが、その「違い」とは即ち、
「ポリゴン(もしくはメッシュ)を細かくできる」ということです。
詳しくはこちらの内容を参照
http://www.awahei.com/seizougyou/hinomarupc.htm

大事なとこだけ抜き出すと、
「それぞれの格子は相互に影響を及ぼし合った末に全体としての動きが決まっていくため、計算は非常に複雑で時間がかかる。格子を細かくすればするほど計算精度は高まるが、細かくし過ぎると計算に何カ月どころか何年もかかってしまう。」
之です。

そもそも「ステルス設計と空力の整合」とは、
ウフィムツェフの「物理工学的解析理論」を機体外形全面の設計に適用することで、かなり解決できると考えられます。
ただし、「ヨタカ」の場合、「計算しなきゃならない点」の数を少しでも減らすために、あとの部分を「難しい計算が必要ない」平面でごまかしてたわけなんです。 で、これが「精神」になると、ポリゴンメッシュをより細かく切ることが可能となった上に、前回からの研究開発の遺産もあるものですから、本当の意味でステルス設計を空力と整合させることが高いレベルで実現できたと思われます。

で、こいつのプロトタイプ初号機の設計が許可されたときのスパコンがこれ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/Cray_X-MP
たぶんジュラシックパークの原作に出てきたやつです。
性能は最大構成でもプレステ2の半分以下。

で、基礎理論はオープンな情報なわけですから、韓国はおろか中国までもが 「よーし独自のステルス機を開発するぞー」
と言い出すわけです。

しかし、これがまさに「言うは易し」というやつで、現場でのノウハウがない上に、ただでさえ困難な「航空機の開発」にステルス設計まで取り入れるわけですから、やはりアメリカ以外の国がステルス機を飛ばすのは早くとも2010年代後半以降になるんじゃないかと思います。

さて、その時列国が先を争うように飛ばす数多のステルス機の中にこの
http://www.jda-trdi.go.jp/topi1805.html
「心神」がある事を祈りましょう。

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