ある程度資料も集まったので、ここで一応
「ステルス設計」についての話をしようと思います。
まあ、ウィキでざっと調べるだけでもステルス技術には
・対レーダーステルス
・対赤外線ステルス
・対可視光ステルス
・対音波ステルス
てな具合にいろいろあるという話になってややこしいのですが、ここではよく一般に言われる意味の
「対レーダーステルス」についてやります。
まあ、一般的な知識として、
http://rouge.pinky.ne.jp/military/clm7.html
これなんかにも解説されている通り、ステルス設計の技術とはぶっちゃけ
「レーダー波を元の方角へ返さないようにする」
という設計の技術であるわけです。
で、こっからがかなり大勢の人が誤解しているところなんですが、
「レーダー波を元の方角へ戻さないためには」
→「多数の平面で乱反射させる」
という認識が一般化しちゃってるようなところがあります。
そこで、説明いたしますが、「レーダーで索敵する」ということは
「暗闇の中でサーチライトを振り回して目標を探す」
ようなものだと思って下さい。(まあ、これはかなり単純化された例えで、また他所でもけっこう使われてるのですが)
すると当然判るかも知れませんが、一番よく見えるのは
「自転車の反射板」みたいなものです。
レーダー場合、このテのものはコーナーリフレクタと申しまして、
http://iss.sfo.jaxa.jp/shuttle/flight/sts99/CR/doc01.html
ポイントは「複数の平面が直角に交わること」だからステルス設計でこればかりはやっちゃいけないということになってるわけです。
そして、その次によく見えるものが
「白っぽいもの」
まあ、金属製のものとかフツーに電波をよく反射するものがこれにあたります。
これとは逆に見えにくくなるのが
「黒っぽいもの」
機体に電波吸収塗料を塗るなどといった方法がこれにあたります。
まあ、このへんは諸国の兵器類には一般的に施されている対策でして、こいつはステルスというよりかは「RCS低減策」と言った方がよいでしょう。
無論最新のレーダーが相手の場合、「まったく役に立たない」という事は無いにせよ、「レーダーに殆ど写らない」というレベルには至りません。
さて、そこで「レーダー波を乱反射」させたらどうなるでしょう?
「ミラーボールにサーチライトを当てる」という状況を想像して下さい。
見つけるなと言う方が無理ですよね?
おそらくこの誤解は「ヨタカ」(F-117)の平面で構成された奇抜な形状が招いたものだと思われます。
ただ、少し注意して見ていただければ判ると思いますが、複数の平面で構成されたこの機体でも、
「垂直に交わる面を徹底して排除」という点に加えて、
「すべての面がいくつかの限定された角度に指向されている」
という設計が為されています。
「レーダー波を乱反射させるミラーボール」は後者の条件を満たしておりません。
「Jウィング」の記事でも平面整合という設計技術が使用されていると書かれていますが、その後がいかんせんあやふやな記述でよろしくありませんでした。
それでは「レーダーにとても写りにくくする」ためにはどうするか?
結論から申し上げましょう。
「一枚のとてもよく磨かれた鏡」を想像して下さい。
鏡の面を正確にサーチライトの光に向けてやらなければ、
「光源の方向へ光が戻ってゆく」ことはありませんよね?
実際にやってみるとよく判りますが、真っ暗な場所を懐中電灯の光を頼りに歩くと、銀色の鏡と透明なガラスは殆ど見分けが付きません。
この辺は戦闘ヘリのキャノピーが平面ガラスで構成されているのと同じ理由です。
つまり重要なのは
「電波を乱反射させる」のではなく、
「電波が反射されうる角度をきつく限定してしまう」という事なのです。
するとどうなるか?
「レーダーに写りうる角度がきつく限定される」という事になります。
つまりはそのための「平面整合」であるわけです。
ただ、軍用機は前方の目標を攻撃するようにできているので、この
「レーダーに写りうる角度」が真正面では意味がありません。
「前方からのレーダー面積」(fRCS)が重要とされるのはここに理由があります。
平面で構成されたF-177も微妙な曲面で構成されたラプタンも、これらの条件を満たすように設計された上でRAM等が使用されているため、
「超低探知性を備えた機体である」つまり、ステルス機であるわけです。
まあ、定性的な話を致しましたが、実際には電波というやつは可視光と比較して波長が長いので、回折やミー散乱なんかもファクターに含めた上で、以上の条件を満たすように厳密に設計してやる必要があるわけです。
で、その航空機のステルス技術ですが、たしかに空力との整合を取るのが難しいこと等から
「少なくとも今現在に於いては」アメリカの専売特許のようになってはいますが、あくまでも既存の理論に立脚したものである以上、
「やり方さえ分かってしまえば」日本やEU、或いはイスラエルのように第一線級の技術力を持った国ならばけっこう簡単にマネできてしまうと思います。
まあ、戦闘機の開発期間はおおむね20~30年程度なので、その頃には
「航空機のステルス設計の技術」は
「プルトニウム原爆の技術」と同じ末路を辿る事になるかと。
ただ、アメリカの事ですから、
その頃には更に20~30年のアドバンテージを得ていることでしょう。
1 件のコメント:
えっとですね、あの後もっかい資料をあさってみたら、小官の論文と大体同じことを主張している方を見つけたんで、参考までに提示しておきます。
http://homepage1.nifty.com/sm/main/senior/word/s/stealth.html
うん、よくまとまっている。
こういう文章を書くように心がけなきゃね。
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